演技とは、自分とは違う人物を演じることPart 1
アドラーのメソッド演技を読んで、印象に残ったエピソードを紹介させていただきます。
誰を演じても同じになってしまう人へ
劇作家は、セリフ以上のことをあなたに託しています。
セリフ以上のことって何？状況です。
どんな劇も、社会的な状況の中で起こることを描いています。その状況を意識せずに演じるなら、あなたの演技は盲点だらけ。
特定のタイプを演じればいい、という時代は終わりました。
１９世紀までなら、決まりきった役だけを劇団で演じればよかった。劇団が求めるタイプに、あなたがフィットしてさえいればそれでよかった。あなたに似た人物だけを演じればよかった。
それは演技と呼べない。自分とは違う人物を演じて、初めて演技をしたといえる。
演劇の歴史を見ても、本人が本人の役を演じたことはないんです。舞台俳優ヘンリー・アーヴィングがアーヴィング氏のまんま、舞台で演技をしたことなど一度もありません。演劇以外の分野では例外がたくさんあるでしょう。でも演劇の中では必ず、俳優は役を演じるのです。
人物はみな、社会的な状況の中に存在しています。状況を考えれば、内容を深く掘り下げることができる。
その人が生きる時代を考えてみれば、その時代の経済状況があります。その人が信心深いかどうかにかかわらず、宗教が及ぼす時代背景もあるでしょう。
また、その人が生きる時代特有のモラルがあります。
家族が共に暮らすことに価値観を見出しているか？離婚はよいことだと思っているか？堕胎には賛成か？
人は政治的な状況にも影響を受けます。
あなたが演じる人物はどんな影響を受け、どう考えるようになったでしょうか？人が社会で暮らす限り、時代ごとの社会状況が存在し、それが劇に描かれる。だから社会を捨てて引きこもる人は、演劇なんて見る必要がないわけ。
あなたが「父親」役を演じるとします。
その場合、「いわゆる父親っぽいタイプ」を演じるのではなく、「このお父さんはどこから来たんだろう？」という疑問を抱いてください。
ハムレットの父は国王。築いた王朝を息子に継がせたいと思っていたお父さんです。
ストリンドベリの『父』は、父であるがゆえに大きな困難に直面した人です。
ストリンドベリが描く父親は、権威を失うかどうかの瀬戸際に立たされています。彼が生きる社会は軍国主義。男性の地位が高く、男らしさが権力の象徴だという風潮が頂点に達している。それでもなお、彼の立場は揺らぐのです。
第二次世界大戦後、ブルックリンの小さな家で二人の息子を育てた。しかし今、セールスマンとしての収入が伸び悩んでいる。あなたが演じるのは、そういうお父さんでしょうか？『セールスマンの死』のウィリー・ローマンですね。彼もまた、販売員であると同時に父親です。
これら、まったく異なる父親像を理解する。そのためには、それぞれが置かれた社会的状況を理解しなくてはなりません。
ハムレットの父はその時代にふさわしい父親であるべき。ストリンドベリの父は特定の問題を抱えている。アーサー・ミラーの『セールスマンの死』の父親は、また別の問題を抱えている。
私の場合、まず社会的な状況を知らなきゃだめ。
でないと、人物をどうとらえていいのかわからない。完全にお手上げ。これだけはどうにもなりません。「ステラ、お前は賢い」と神様はおっしゃったけれど、それでも社会の背景は意図的に調べなきゃ、わかりません。
このメソッドはいいですね。全面的に賛成です。
楽しみながら社会の背景や歴史を調べるには、本を読むことがひとつの方法です。
私たちがお勧めする本は、こちら。
「１９８４年」 ジョージ・オーウェル著
全体主義(独裁国家)に支配された社会を描いたSF小説です。
「ハツカネズミと人間」
1962年にノーベル文学賞にも輝いたアメリカの作家ジョン・スタインベックの小説です。芥川賞作家の小川洋子さんは、「悪意のない人間が、悪意によって傷つけられてしまう非常に切ない小説である。」と評しています。
「グリム童話メルヘンの深層」 鈴木晶著
「農民は民話をとおして告げ口する」 なぜ、継母や子捨ての話が多いのか？グリム童話の背景には、当時のヨーロッパを襲った大飢饉の影響が見え隠れしています。
それでは、また！
参考文献
魂の演技レッスン２２ 輝く俳優になりなさい！ フィルムアート社
【新入生募集中！】
18歳以上
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無料体験入学 ＆ レッスン見学受付中！
Voice actor laboratory 声優演技研究所
誰を演じても同じになってしまう人へ
劇作家は、セリフ以上のことをあなたに託しています。
セリフ以上のことって何？状況です。
どんな劇も、社会的な状況の中で起こることを描いています。その状況を意識せずに演じるなら、あなたの演技は盲点だらけ。
特定のタイプを演じればいい、という時代は終わりました。
１９世紀までなら、決まりきった役だけを劇団で演じればよかった。劇団が求めるタイプに、あなたがフィットしてさえいればそれでよかった。あなたに似た人物だけを演じればよかった。
それは演技と呼べない。自分とは違う人物を演じて、初めて演技をしたといえる。
演劇の歴史を見ても、本人が本人の役を演じたことはないんです。舞台俳優ヘンリー・アーヴィングがアーヴィング氏のまんま、舞台で演技をしたことなど一度もありません。演劇以外の分野では例外がたくさんあるでしょう。でも演劇の中では必ず、俳優は役を演じるのです。
人物はみな、社会的な状況の中に存在しています。状況を考えれば、内容を深く掘り下げることができる。
その人が生きる時代を考えてみれば、その時代の経済状況があります。その人が信心深いかどうかにかかわらず、宗教が及ぼす時代背景もあるでしょう。
また、その人が生きる時代特有のモラルがあります。
家族が共に暮らすことに価値観を見出しているか？離婚はよいことだと思っているか？堕胎には賛成か？
人は政治的な状況にも影響を受けます。
あなたが演じる人物はどんな影響を受け、どう考えるようになったでしょうか？人が社会で暮らす限り、時代ごとの社会状況が存在し、それが劇に描かれる。だから社会を捨てて引きこもる人は、演劇なんて見る必要がないわけ。
あなたが「父親」役を演じるとします。
その場合、「いわゆる父親っぽいタイプ」を演じるのではなく、「このお父さんはどこから来たんだろう？」という疑問を抱いてください。
ハムレットの父は国王。築いた王朝を息子に継がせたいと思っていたお父さんです。
ストリンドベリの『父』は、父であるがゆえに大きな困難に直面した人です。
ストリンドベリが描く父親は、権威を失うかどうかの瀬戸際に立たされています。彼が生きる社会は軍国主義。男性の地位が高く、男らしさが権力の象徴だという風潮が頂点に達している。それでもなお、彼の立場は揺らぐのです。
第二次世界大戦後、ブルックリンの小さな家で二人の息子を育てた。しかし今、セールスマンとしての収入が伸び悩んでいる。あなたが演じるのは、そういうお父さんでしょうか？『セールスマンの死』のウィリー・ローマンですね。彼もまた、販売員であると同時に父親です。
これら、まったく異なる父親像を理解する。そのためには、それぞれが置かれた社会的状況を理解しなくてはなりません。
ハムレットの父はその時代にふさわしい父親であるべき。ストリンドベリの父は特定の問題を抱えている。アーサー・ミラーの『セールスマンの死』の父親は、また別の問題を抱えている。
私の場合、まず社会的な状況を知らなきゃだめ。
でないと、人物をどうとらえていいのかわからない。完全にお手上げ。これだけはどうにもなりません。「ステラ、お前は賢い」と神様はおっしゃったけれど、それでも社会の背景は意図的に調べなきゃ、わかりません。
このメソッドはいいですね。全面的に賛成です。
楽しみながら社会の背景や歴史を調べるには、本を読むことがひとつの方法です。
私たちがお勧めする本は、こちら。
「１９８４年」 ジョージ・オーウェル著
全体主義(独裁国家)に支配された社会を描いたSF小説です。
「ハツカネズミと人間」
1962年にノーベル文学賞にも輝いたアメリカの作家ジョン・スタインベックの小説です。芥川賞作家の小川洋子さんは、「悪意のない人間が、悪意によって傷つけられてしまう非常に切ない小説である。」と評しています。
「グリム童話メルヘンの深層」 鈴木晶著
「農民は民話をとおして告げ口する」 なぜ、継母や子捨ての話が多いのか？グリム童話の背景には、当時のヨーロッパを襲った大飢饉の影響が見え隠れしています。
それでは、また！
参考文献
魂の演技レッスン２２ 輝く俳優になりなさい！ フィルムアート社
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無料体験入学 ＆ レッスン見学受付中！
Voice actor laboratory 声優演技研究所
