ねたみ心のない人間などいない
評論家、中部大学女子短期大学副学長、中部大学名誉教授、赤塚行雄さんの言葉を紹介させていただきます。
ねたみ心のない人間などいない
「ねたむ」とひとくちにいっても、いろいろな意味があります。
そのひとが、あまりに立派で、カッコよく、なんでもみごとにやってのけるので、なかばあこがれつつ、「こんちくしょう!」と、うらやむ場合もあります。
それとはちがって、表面はいい子ぶって、調子よくふるまいながら、裏にまわってきたない手を使い、成績や世間の評価を勝ちとるやつを、自分が不器用なだけに、
「いやなやつだ!」
と、心からにくむ場合もあるでしょう。
「嫉妬(しっと)」というけれど、ともに女偏であるところから、むかしは、「女の子みたいにつまらぬことでくよくよするな」などと、よくいわれました。
ところが、実際は、女の子よりも、むしろ男の子たちのあいだで、「嫉妬心」がはげしくくすぶりがちなのです。
なぜなら
「嫉妬心」は、「競争心」と表裏一体だからです。
受験、成績から始まって、異性にもてるか、もてないか、腕力が強いか、強くないか、さらに名誉や出世まで、男たちは、生涯を通じて「競争心」をあおられ、「嫉妬心」にさいなまれがちです。
だから、「うらやむ」とは、どういうことなのか、これを軽く見ないでしっかりととらえていなくてはならないと思うのです。
アトランタのオリンピック(1996年)男子マラソンで金メダルをとって、祖国、南アフリカに凱旋したチュグワネは、その名誉と富をねたまれて、命までねらわれるさわぎとなってしまいました。
チュグワネの自宅は、黒人だけの貧民区にあるのですが、ロードレースで獲得した車はぬすまれるわ、家には投石されるわ、自宅に帰ることもできない。
政府はボディーガードをつけて、チュグワネ一家を保護してやらねばならなかったといいます。
「ねたみ」というものは、人間ならだれもがもっている感情です。
けれども、ふつうは、この南アの貧民区のようにストレートには爆発しません。ストレートに爆発するのであれば、時期がくれば終わるだろうし、かえってさっぱりしています。
ところが、ふつうは、このように爆発しません。心のなかで、ひと知れず、ぶすぶすとくすぶりつづける。だから始末が悪いのですね。
平生(へいぜい)はなんということなくつきあっていて、気も合う。だから友人と思い込んで気をゆるしていると、その男がかげにまわって、足をひっぱることをしたり、いったりする。
そんなことは、よくあることで、いちいち気にしていたら、せっかくのこの人生をだいなしにしてしまいます。
だいたい、あなた自身だって「ねたみ心」をもっているでしょう。
他人にきびしくなるだけでなく、自分の心の動きにもきびしくなったほうがよいのです。「ねたみ心」のない人間なんて、この世のなかにいないのです。人間なら、だれだって多かれ少なかれ「ねたみ心」をもっています。
ただ、かしこい人間や、世渡りじょうずの人間は、「ねたみ心」のスマートなあつかいを心得ていて、これをプラスの力にかえてしまう。
「悪性(あくしょう)の気よし」ということわざがあります。
浮気や道楽にふける人間は、とかく気のよい者が多い。気がよいから、ちょいとおだてられたりすると、その気になってうらぎってしまうのであって、自分を大切にしようとする分別がないだけだ――そんな意味です。
こんなことわざがのこっているということは、むかしから冷静に世のなかのことを見ているひとが少なくなかったということで、わたしたちもここから学び、利口に、クールに身を処さねばならないと思います。
ジョージ・ブライアン・ブランメルのこと
スマートに、まことにクールに身を処した男といえば、なんといってもジョージ・ブライアン・ブランメルです。
よく、若いお姉さんたちが、
「うちの部長はダンディーで、すごく素敵なのよ」などというでしょう。
じつは、ジョージ・ブライアン・ブランメルこそが、そのダンディーなるものの元祖なのです。
だから、そのブランメルの生い立ちや、少年時代の劣等感――周囲の家柄のよい人々にいだいた「ねたみ心」や、その「ねたみ心」をどのように克服していったかという彼の生き方、着眼点を知れば、ダンディーの真の意味、その精神についても、よくわかるようになるでしょう。
今回は、ここまでです。
次回、Part.2では、ブランメルの生い立ちについて紹介させていただきます。
「ねたみ対処方法」Part 2 - 声優演技研究所 diary
参考文献
なぜねたむ心があるのか?10代の哲学 3 ポプラ社
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Voice actor laboratory 声優演技研究所