「ねたみ対処方法」Part 2
評論家、中部大学女子短期大学副学長、中部大学名誉教授、赤塚行雄さんの言葉「ねたむ心」Part 2 です。
よく、若いお姉さんたちが、「うちの部長はダンディーで、すごく素敵なのよ」などというでしょう。
じつは、ジョージ・ブライアン・ブランメルこそが、そのダンディーなるものの元祖なのです。
ブランメルの一族は、男は下僕、女は乳しぼりでした。祖父は、人柄のよいまじめな下僕で、この祖父の一粒種のウイリアムの代になって、一家の地位が向上します。
父、ウイリアムは、有名なノース卿にとりたてられて下僕から秘書になって、忠勤にはげみました。
ノース卿は気前のよいところがあって「ボーナスの殿様」というあだ名がありました。
そういう殿様のおかげで、父のウイリアムは立派な邸宅をかまえる身分となりました。ちょっとした財産と社会的地位を手に入れたウイリアムは、十二歳になった息子ジョージをイートン校に入学させます。もちろん、ノース卿の口ぞえがあってのことです。
そのころのイートン校は、イギリスの貴族階級の男の子たちだけが学べる教育機関だったのです。
下層の出ながら、そういう学校にまぎれこむことができたジョージ・ブライアン・ブランメルは、たいへんな名誉だったけれど、周囲の仲間は、みな貴族や名門の出です。
「ぼくの父は、もともとは下僕の出で、名門の学友たちとは、とても対等につきあってはいけない」
これが、ジョージのなやみでした。
「ねたみ心」は悪夢を呼ぶ
学業に精を出して一番になってやれと思うものの、貴族のなかには、すごい秀才がいて、とても、そんなことは不可能です。
では、スポーツで目立つ男になろうと思っても、乗馬にしろ、フェンシングにしろ、球技にしろ、貴族の男の子たちは幼いころから親しんでいるから、これまた太刀打ちできない。
「ぼくは、みなから、あなどられないためには、どうしたらよいのだろう」ジョージは、劣等感にさいなまれながら考えます。
十八世紀のイートン校では、いや、オックスフォード大学でも、ケンブリッジ大学でもそうなのですが、学籍簿に貴族の出か、そうでないかのしるしがつけられていました。
クラスの仲間は、表面的にはわけへだてなく、ふつうにつきあってくれているように思えますが、組織ぐるみで、学校当局自体が、学籍簿にそんなしるしをつけ、もともと自分たちのグループに属さない人間として、陰険に拒否しているようにジョージには思えてなりません。
「ねたみ心」というものは、劣等感や疎外感、あるいは被害者意識と手をむすんで、つぎつぎに悪夢をよびます。
「これではいけない。ぼくは、もっと胸をはってどうどうと生きねばならない」ジョージがえらいところは、そう思いかえして、立ち直っているところです。
「氏素性で劣り、学業でも劣り、スポーツでもダメ。それなら、ぼくは服装、姿勢、態度、立ち居振る舞いに細心の注意をはらい、おしゃれについてはイートン校で一番といわれるような男になってやろう」
貴公子ぞろいのイートン校には、生まれつき品のよいやり方をする男の子がいるわけですが、彼らはそれを意識していません。
ジョージは、意識的にそれらを学びとり、体系化していきます。
「ジョージは、いつもカッコいいねぇ」
「ジョージは、イートン校一番のしゃれ者だな」
いつのまにか、そういう評判が立ち始めます。そうなると、みながジョージのまねをしはじめます。
ジョージのネクタイの結び方、ジョージの靴の止め金のかがやき、ジョージのしゃべり方…それらがイートン校の男の子たちのひとつの典型となって、ひろがっていきます。
ブランメル、連隊騎手となる
「ジョージ君。オックスフォード大学を卒業したら、わたしのところへ来たまえ。近衛第十軽騎兵連隊に入れてあげよう」
プリンス・オブ・ウェールズ、のちのジョージ四世は、すっかりブランメルを気に入ってしまい、異例の抜擢(ばってき)で将校として入隊しました。
ふつうだったら有頂天になってまいあがってしまい、うぬぼれや、行きすぎた行動でつまづくのが、未成熟な成功者のたどるコースですが、ブランメルは違っていました。
この続きは、Part 3 で!
参考文献
なぜねたむ心があるのか?10代の哲学 3 ポプラ社
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