「ねたみ対処方法」Part 3
評論家、中部大学女子短期大学副学長、中部大学名誉教授、赤塚行雄さんの言葉「ねたむ心」Part 3 です。
ジョージ・ブライアン・ブランメルが、近衛第十軽騎兵連隊に、将校として入隊したのは1794年のことです。
この部隊への配属をみとめられるということは、兵、下士官でも、よほど優秀な男でなければならなかったし、ましてや将校ともなると名門中の名門貴族でなければならない。ところが、下僕や乳しぼりの一族から出たブランメルが異例の抜擢で、騎手になったのです。
ふつうなら、思いがけない夢のような出世に目がくらみ、得意になって鼻にかけたりするところですが、ブランメルは、冷淡なぐらいに無関心で、淡々としていました。
それこそ仲間たちから、ねたまれたり、そねまりたりして、
「あの成り上がり者が…」
などと悪評がたってもおかしくないのに、本人が有頂天になったり、まいあがったりしないで、淡々としているから、この寵児(ちょうじ)に対し、もっとも閉鎖的なイギリス社交界のサロンまで、よろこんでブランメルをむかえいれたのです。
よろこんでまいあがるのは、そもそもがいやしい証拠。ブランメルは淡々としていました。だから仲間から「ねたまれる」こともなかったのです。
「よいことがあれば、悪いこともある。それが人生なんだから、よいことがあったからといって、有頂天になってはいけない。悪いことがあったからといって悲しんでもならない」
淡々として「無関心(ニル・アドミラリ)」の態度で生きていくのがいちばん利口な生き方だ。――これがブランメルの信念でした。
よいことがあってもまいあがらないけれど、失敗があっても、くよくよしない。
ある日、ブランメルは大失敗を演じてしまいます。
閲兵式(えっぺいしき)の最中に落馬して、頭からつっこみ鼻にケガをしてしまったのです。
しかし不思議なことが起こります。
ブランメルの中隊の若い将校や古参の下士官たちのあいだで、わざと馬から落ち、鼻にケガをして、鼻にななめにばんそうこうをはる者が続出したのです。
この流行は、軽騎兵たちのあいだ全体にひろがって、鼻梁骨折をしていたり、鼻に傷があったりすると、「いかにも勇敢な軽騎兵らしい」と思われて、かえって酒場などでもてはやされるようになったのです。
ジーンズをわざとボロボロにし、ひざのあたりをやぶってはくようなもので、いったんカッコいいと思われると、負の記号までまねたくなってしまう。人間の心の動きとはおもしろいものだと思いませんか。
そのような影響力は、どのようにしてつちかわれたかというと、自分の劣等感と向かいあい、「ねたみ心」を克服する過程で生まれたのです。劣等感や「ねたみ心」を、プラスの力にかえる生き方を、ここから学びたいものだと思うのです。
だれだって、その気になればダンディーといわれる存在になれそうに思えます。だが、それがなかなかむずかしいのですね。
なぜなら、ダンディーは、ただの「おしゃれな男」ではなく、心の持ち方にも深くむすびついているからです。知的な幅広い関心も必要でしょうし、なによりも精神的な修練が大切です。
ダンディーとは「精神的な貴族」だからです。
ひとはだれも「ねたみ心」をもっています。しかし、かしこい人や、スマートな人は、他人をにくむのではなく、その心を自分のほうに反射させ、プラスの力にかえてしまう。
つまり、一枚うわ手の解決をするということです。
「ねたみ心」をテコに反転して、いつのまにか、「ダンディー王」として、みなから憧れの人物になってしまったブランメルのことを、ときどき思い出してください。
男にしても、女にしても、ほんとうに強い人は、知的な離れ技ができる人なのです。
参考文献
なぜねたむ心があるのか?10代の哲学 3 ポプラ社
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