「土人の魔術」フレドリック・ブラウン作
デッカー夫妻は離婚問題で論じ合っていました。
絶対に半分です。財産の半分と、お金の半分、それでなくては絶対に承知しません。
ふざけるな!
そうかしら。その気になれば、全部いただくことだってできるんですよ。それもごく簡単にね。
ハイチに旅行しているあいだにヴードゥーの魔術を習ったんですよ。
くだらない!
ところが、そうじゃないんです。あなたは私が善女だということに感謝しなくちゃ。その気になれば、あなたを殺すことぐらいわけないんですからね。
そうしたら、お金も全部、不動産も全部、ごっそり私のものになるんですよ。
ヴードゥーで殺せば、心臓マヒで死んだのと区別ができないんですって。
たわごとだ!
そうお思いになるの。私は蝋(ろう)とピンをもっていますの。どう、ひとつまみでいいからあなたの髪の毛をくださらない。実地にお見せしましょうか。
嘘八百だ!
それなら、こわがっていないでやらせてごらんなさいよ。私にはこれが効くことがわかっているんですから。
どう、こういうことにしては?もしそれであなたが死ななければ、私は離婚を承知し、しかも一銭の要求もしない。もしこれが効いたら、私は自動的にすべてをちょうだいする。
よし。蝋とピンを取ってきたまえ。・・・・そら髪の毛だ。
後悔しますよ。
夫人は言って、髪の毛を差し込んだ蝋人形の胸にピンを突き刺した。
そ・・・それで、どうなったの。
デッカー氏は驚きました。
が、
後悔よりもうれしい気持ちのほうが強かったのです。
もともとヴードゥーは信じていませんでしたが、慎重な男だったので、万が一を考えたのです。
それに、細君がめったにヘアブラシの掃除をしないので、氏はいつも腹を立てていた矢先でもありました。
参考文献
スポンサーから一言 創元SF文庫
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この2人、結婚してたにょか・・・。