メソッド演技は危険なのか?
マリリン・モンローを育てたことで有名な、リー・ストラスバーグにとって、過去に自分が体験した感情を再現してみせることが演技の要でした。
ただ、自分の体験には「トラウマ(心的外傷)」と呼ばれるものがあります。
トラウマとは、「思い出したくない心の傷」のことです。虐待された過去とか、震災の経験などがそれにあたります。
思い出したくない過去はつかうな
ウタ・ハーゲンのメソッドでは、そう教えています。
ところが、マリリン・モンローを育てたことで有名な、リー・ストラスバーグは、それを使っちゃったんですね。
トラウマの心理を思い出させたら大変なことになります。
だから「メソッド演技は危険だ」と言われているんですね。
ですが、ウタ・ハーゲンは「思い出したくない過去はつかうな」といってましたよね。
そこに誤解があるんです。
スターウォーズのフォースにたとえると、
「ダースベイダーが使うフォースの暗黒面は悪いフォースだから、正義の味方のルークやオビワンの使うフォースも、きっと悪いに違いない」という誤解です。
わたしは、そのことを知ってますから、HPにはリー・ストラスバーグのメソッドは載せてないんです。
メソッド演技は、1つじゃなくてたくさんあることを覚えておいてください。
結論としましては
トラウマの経験さえ使わなければ、メソッド演技は大いに有効だと思いますよ。
相手によりそう気持ちを持つ
弁護士さんなどには不可欠な視点ですが、メソッド演技もこれと同じです。
「お前は悪者だ」という批判的な視点ではなく、「同じような状況になったら、だれでも同じことをする可能性がある」
だからこそ、罪を犯した根本原因を見つけだし、社会のシステムを変えていこう。
それが弁護士の基本理念だと思うのですが、実は役者も同じです。
「犯罪者は悪者だ」という視点だけじゃなくて、「なぜ犯罪を犯したのか」という心理を探り、それを忠実に映画などで演じることで、住みやすい社会へ変えていこう、という考えです。
メソッド演技を否定する人たちは、「犯罪者の気持ちを知ることで役者の心が壊れてしまう」危険性を唱えていますが
もしも、犯罪者の心理を探れば心が壊れるのなら、弁護士はどうなるのでしょう?
以上のことから、「弁護士が大丈夫なように、メソッド演技も大丈夫なんじゃないの」と、わたしはお気楽に考えてます。
「犯罪者の心理」と、「自分のトラウマ体験」は、まったく別ものじゃからな。
考えかたに蓋(ふた)をする
ある考え方を知ることで、「その思想にかぶれちゃう」ってことは人間にはよくあるわ。
だから、ふたをしちゃうの。そんな考えはなかったことにするの。そうすれば世の中はお花畑みたいに平和になる。
ヒトラーがやった焚書【ふんしょ】と同じ。メソッド演技もそうしましょ。
だけど、蓋(ふた)したところでホントにそれでうまくいくのか?
この問題は、唯物論と唯心論みたいに終わりがありませんね。ブログでの議論はこの辺にしときます。
ストラスバーグにとって、過去に体験した感情を再現してみせることが演技の要だった。
だがアドラーは――また彼女によればスタニスラフスキイも――イマジネーションを働かせることが第一と信じている。
俳優自身が過去に感じた気持ちは、劇中の人物の感情と同じとは限らない。知性と想像力を駆使して人物の心に入り込むことが重要なのだ。
「ステラ・アドラー 魂の演技レッスン22」より
SFアドベンチャー映画などでは、宇宙怪獣に襲われて食べられてしまう役がありますね。
もしも経験することが重要なら、犬などにかみつかれてみることが演技をするうえで必要になってしまいます。(あくまで極論です)
でも、スタニスラフスキイ、ステラ・アドラー、ウタ・ハーゲン、サンフォード・マイズナーなどは、「そんなことする必要はないよ。痛いだろうな、怖いだろうなとイメージするだけでいいんだよ」といっているんですね。
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