ろばの皮
文学は人の心を映します。
「赤ずきんちゃん」で知られるペロー童話です。
ろばの皮
むかし、とても仲の良い王様と王妃がいました。
でも王妃様は重い病気になってしまいました。
臨終のとき、王妃は夫の王にいいました。
「ひとつだけお願いがあります。もし、再婚したいとお思いになったら…」
「ああ、そんな心配は無用だ。そんなことは決して考えない」
「その通りだと信じます。でも、わたしよりも美しく、賢い女に会われたら、結婚してもかまいません」
なんで王妃様がそう言ったかというと「自分よりも美人で頭のいい女なんているハズがない」と思っていたから。
ウラを返せばこの約束は「再婚しないでね」という意味なんです。
そうなの?
ちゃんと原作にそう書いてありますよ。 あ、ホントだ。
夫の腕に抱かれて王妃はなくなり、夜となく昼となく王の泣くのを聞いて、みな思いました。
お悲しみもそれほど長くはつづくまい、と。
みなの予想は、はずれませんでした。
案の定、数か月後には、王は新しい王妃様を選ぼうと思いはじめました。
ウソでしょ・・・。
でも誓いは守らねばなりません。
美人の多い宮廷も、田舎も、町も、まわりの王国にも、亡くなった王妃より美しい女性はいませんでした。
じゃあ王様は再婚できなかったの。
ところがいたんです。亡くなった王妃様そっくりで若くて美しい
困った王女は、もの知りの仙女に相談します。
王さまに無理難題を願いなさい。ものすごく豪華な空の色をしたドレス、月の輝きをしたドレス、そしてもっと輝かしい太陽のドレスをください、と。この約束を果たすことはできますまい。
王さまはこの願いをあっさりクリアしました。
あきらめてはなりません。王様の大切なろばの皮をおねだりなさい。
王さまのろばは金貨を毎朝ひねり出す不思議なろばで、王さまの全財産なのです。さすがにこのろばは殺せないだろうと仙女は考えたのです。
ろばの皮が運ばれてきたとき、王女はひどくおびえました。
・・・・だろうね。
王女はお城から逃げ出しました。
あたりまえです。
王女は遠く、遠く、ずっと遠くまで行って
ろばの皮をかぶって変装して農家の下女として住み込みました。
この土地には、しばしばこの国の王子が立ち寄り
「ろばの皮」をかぶった王女は遠くから愛をこめて王子を眺め「なんて魅力のあるお方」と思いました。
ある日のこと、王子がたまたま「ろばの皮」のつましいすみかの鍵穴に目をあててみます。
そのとき「ろばの皮」は豪華な飾りをつけ、すばらしいドレスを着ていました。
王子さまは夢中になって、むさぼるようにお姫様の姿をながめ、
三回ばかり、王子さまは戸を押し破ってやろうと思いましたが、
目の前にいるのは女神かもしれないと考えて、その都度、尊敬の気持ちから手をひきました。
王子さまは宮廷にもどると閉じこもって物思いに沈み、夜となく昼となく恋のため息をつくのでした。
王子さまとろばの皮は結婚できるのでしょうか。
ちなみに
王子が扉に近づいて鍵穴から眺めた時、「ろばの皮」が気づいていた、と確信しています。
こういう点にかけては女性はまことに機敏
目の動きもす早いので、見たことを気づかれずに、女性を見ることなど一瞬たりともできません。
あの・・・それって・・・
王子さま、どうかなされましたか
・・・なんでもない。
参考文献
完訳ペロー童話集 岩波文庫
長靴をはいた猫 河出文庫
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グリム童話にも「ろばの皮」と同系統のお話「千匹皮」がありますよ。
参考文献
初版グリム童話集 白水社
完訳グリム童話 角川文庫
完訳グリム童話集 岩波文庫