当たり前をうたがう。
なににつけても、あたりまえだと思っていることを、まずは、あらためて考えてみることです。
それがつまりは、うたがうというふるまいですね。たとえば、「人が演技する」ことも、よくよく考えれば、どこかおかしい。
たとえば、まったく演技経験のない人や、演劇のトレーニングを受けたことがない人でも、台本をわたせば、それなりに、「演技らしきもの」をするのが、そもそもおかしいでしょう。
たとえば、飛行機に乗ったことがある人でも、いきなり操縦桿をにぎらされたらどうでしょう。とても飛行機は動かせません。
けれど、演技では、それとよく似たことが出現する。しかも、どうやらそれが、可能らしい。
ほんとうに奇妙な話です。
そしてさらに重要なのは、たとえば、とても小さな声で演じる演劇や、まったく声を出さない演劇もあることです。
それは「うたがい」のなかから生まれた演劇たちです。
演技することをもっと根本的なところから考えた結果として生まれました。
あなたは、いま、お芝居をしています。
たとえば、シェイクスピアの「ハムレット」でもいいです。
しかし、ハムレットを演じているとちゅうで、ふと、「俺、なんでハムレットなんだ?だって俺、デンマーク人でもないのに、なんでこんなことしてるんだ?」と考えだしたら、うまくせりふが出てこなくなるでしょう。
うたがわないほうが無難です。うたがいはじめたら、なにもできなくなります。うたがわずにいれば、楽に生きることができそうです。
どのように演劇とかかわるかは、あなたの自由です。それは、どんな生きかたをするのも自由なのとおなじです。
ただ、少しでもうたがうことで、演劇にしろ、生きることにしろ、ゆたかになるのだとわたしは思います。
「うたがう」
私の大好きなブレヒト演劇にもつながるテーマですね。
これまでの人生で、演劇にふれたことがある人もない人も、どちらも楽しめる内容の本だと思いますよ。おススメします。
参考文献
演劇は道具だ 理論社
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Voice actor laboratory 声優演技研究所