ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

14歳からの社会学

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今回は、社会学者の宮台真司さんが、中高生向けにわかりやすく解説した本を紹介します。f:id:seiyukenkyujo:20190807012905g:plain

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【内容】

「尊厳」には「多様性」も必要

単に「自由」にふるまうだけじゃ、君は幸せにはなれないんだ。そこで「人が幸せに生きる」ために必要な条件を「尊厳(自尊心・自己価値)」ということを軸に考えてみよう。

 

自由だけで尊厳が得られるだろうか。自由と尊厳はどんな関係にあるのだろうか。

 

選択肢を知っていて、選ぶことを邪魔するものがなく、選ぶ能力があることが「自由」だ。自由であるにも、能力が必要だということだ。

 

そういう能力がとぼしい人はどうしたらいいのか。修行すればいいのか。修行している途中で死んだら、うかばれないよ。

 

能力によって自由を楽しめる度合いが違ってくる。これは本当のことだ。

 

でも能力がとぼしいからといって過剰にみじめにならず、自分がそこにいてもいいんだ、自分は生きていていいんだ、自分は他者に受け入れられる存在だ、と考える。それが「尊厳」ということだ。

 

自由だけじゃ、みんなが幸せになるのは無理だ。自由が別の人の自由をおしのけないようにルールを調整するのは大切だけど、それだけじゃ足りない。

 

たとえば、社会には文化があって、自己主張が上手な人が得をする文化の国もあれば、協調性が高い人が得をする文化の国もある。

 

宗教も文化の一種だ。

 

キリスト教の国ではキリスト教徒は生きやすいけど、イスラム教徒は生きにくい。イスラム教の国ではイスラム教徒は生きやすいけど、キリスト教徒は生きにくい。みんなに平等に権利をあたえても、社会ごとに誰が自由に生きやすいかが変わるんだ。

 

みんなが尊厳をいだいて生きられるようにするには、自由を尊重しようというだけじゃ足りない。社会が一色の文化に染まっていれば、別の文化の人は生きにくくなる。どんなに「自由にしてもいいですよ」といわれても、自由を利用できるチャンスが限られてしまうからだ。

 

自由だけじゃみんなの尊厳を支えられない。そこで社会学では、みんなの――より多くの人たちの――尊厳を支えるには、「自由」と「多様性」の両方が必要だと考える。自由だけだと、多数派や強い人たちの色に社会が染まりすぎる。いろんな色が必要なんだ。


「尊厳」と「承認」のメカニズム

人生うまくいかなくても過剰にみじめにならず、自分がそこにいてもいいんだ、自分は生きていていいんだ、自分は他者に受け入れられる存在だ、と思えることが「尊厳」だった。

 

実は、君が他者に対して自由にふるまえるためには「尊厳」が必要だ。わかるだろうか。

 

「尊厳値」が低ければ、他者の前で思い通りにはふるまえない。

 

能力が理由であれ、性格が理由であれ、信仰が理由であれ、「自分はバカにされるんじゃないか」「自分は許されない存在なんじゃないか」と思わざるを得ない状態で、他者の前で堂々とするのは難しい。

 

自由であるためには「尊厳」が必要なんだ。

 

「尊厳」は、君以外の人(他者)から「承認」される経験を必要としている。逆にたどれば、他者から「承認」された経験があるからこそ、「尊厳」(「失敗しても大丈夫」感)が得られ、それをベースに君は自由にふるまえるんだ。


1.君が「試行錯誤」する(自由)f:id:seiyukenkyujo:20190807014729g:plain.それを他者が認めてくれる(承認)f:id:seiyukenkyujo:20190807014729g:plain.「失敗しても大丈夫」感をいだける(尊厳)f:id:seiyukenkyujo:20190807014729g:plain.安心してさらに「試行錯誤」するf:id:seiyukenkyujo:20190807014729g:plain.・・という循環がある。

 

人間を社会的に成長させるのは、この循環なんだ。

 

たとえよう。


.学校で君がある授業を選んで「この選択はよかった」/「失敗した」と思うf:id:seiyukenkyujo:20190807014729g:plain.他者が「よかったね。次もがんばって」/「残念だったね。でも次がんばればいいじゃん」と君に言うf:id:seiyukenkyujo:20190807014729g:plain.君は「次もがんばるぞ」/「次はがんばるぞ」と意欲を出す。


子どもが大人になるとは、他者たちと交流する中で「試行錯誤」を繰り返し、「みんなはこういうことを『承認』するんだ」ということを学んで経験値を高め、「自分はたいてい大丈夫」という「尊厳」を得ていくことだ。

 

昔も今も、そして将来も、永久に変わらない。

 

宮台真司さんとは

ぼく(宮台真司)の個人史を話そう。

 

6年一貫教育の私立男子校(麻布中学・高等学校)に入学したとき、中学高校紛争と呼ばれる学校側と生徒側の激しい対立が続いて、数か月間授業がなかった。

 

紛争が終わったのは中3のとき。あれ果てていた。窓は破れ、ロッカーはこわされ、壁には穴があいていた。

 

ガンコな理事長や教師という権力が、ぼくたちをしばりつけている。だったら戦ってそれを取りのぞけばいい――。実際戦って、ぼくたちは勝った。じゃあ、それで学校はよくなったのか?ぼくはあれ果てた風景を目の前にして、マジで頭をかかえてしまったんだ。


一番ひどかったのが、ぼくたちの学年だった。


ぼくたちの大学受験について、教師たちは「こいつらはもうダメだ」ってあきらめていた。ところがどっこい。いざフタをあけてみると、まともに授業を受けなかったぼくたちが、いまでも歴代1位の進学実績を残したんだ。


ぼくたちの学年にはすごいエリートがいっぱいだ。エリート教育を考えるときに大きなヒントになる。ぼくたちは戦いに勝ったのに学校はメチャクチャになった。何もたよれないから、なんでも自分の頭で考え、自分の力で前に進むしかなかった。それが実績につながったんだ。


誤解しないようにいうと、ぼくのいう「エリート」は、昔の日本社会で通用した「東大→官僚=自己実現」みたいなタイプの人間じゃない。「幸せは人それぞれ」のいまの社会で「それでも多くの人が幸せになれるルールがあるはずだ」と考えられるタフな人間のことだ。

 

自由とは自分で自分を支えること

あとからふり返ると、その時期の経験が、いまのぼくの考え方やものの見方に大きく影響していることに気がつく。ぼくは、何もかも疑って日本的常識をこわす社会学者として知られている(悪名が高い)。そうした社会学者としての土台は、そのころ(学生時代)にできたんだね。

 

ぼくたちは自由だった。何をしても文句はいわれない。でもすぐにそれが問題だとわかった。教師たちにしばられて命令されていれば、何をしていいかわからないということはない。ガンコな理事長みたいな敵がいるときも、戦えばいいのだから迷うことはない。

 

ところが戦いに勝って、ガンコな教師も理事長も学校をやめて、自分たちをしばりつけていた障害がすべてなくなったとき、ぼくたちは何をすればいいのかわからなくなって苦しむようになった。自由とは自分で自分を支えることだ。でもこれが苦しくて難しいんだ。

 

でも、おかげでぼくたちにはチャンスが与えられた。自分は何者なのか、本当は何がしたいのか、何を他人にほめてもらいたいのか、何をダメだといわれたら苦しいのか、徹底的に考えることになった。こういう経験がなければ、いまのぼくはなかっただろうと思う。

 

こういう中学高校時代の経験を通じて、中身がないくせに、役割や組織の力というゲタをはいていばっている人間と、そういったものを一切たよりにしないけれど人間としての力にあふれている人間とを、区別できるようになった。これはいまのぼくの能力でもある。

 

それと同時に「生きる場所が違えば、感じ方も考え方も違う。みんなが同じ感じ方や考え方をしろと簡単にはいえないな」と思うようになった。これもいまのぼくの考え方そのものだ。学校の中と違って世の中には「ひとつの答え」が見つからないことばかりだ。


だから「これさえあれば人間は幸せ」ということはない。

 

ぼくが紛争の経験から学んだように、自由になれば学校がよくなるとはいえない。でもメチャクチャな学校こそが人を育てることもある。社会も同じだ。いい社会を単純に考えちゃダメなんだ。

 

悪い社会は人を不幸せにする。ぼくは社会学者としていい社会にしようと努力してきた。これからもそうしようと思う。でもそれが成功しても、みんなが幸せになるとはいえない。みんなを幸せにしたくても、幸せを単純に考えちゃいけない。

 

もちろん、実際いまある多くのルールには、管理する側の都合のよさとか、ルールを作れる権力を持った人々が自分の利益を守ろうとするエゴイズム(自分中心主義)がある。

 

ぼくは、それを当然批判していく。

でも、その程度のことでみんなが幸せになれるわけじゃないんだ。

  

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宮台真司さんが大人向けに語られる理論は、わたしの頭では難解すぎて半分以上わからなかったりするんですが、

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こうやってわかりやすく、かみ砕いて説明されると、あらためてそのすごさが実感できます。

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ただ正直に申し上げて、この本はけっこう過激です。だからこそおもしろかったりもするのですが…。

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宮台さんの意見や、他の社会学者の意見を比べるなどして、自分の成長につなげていきましょう。

 

参考文献

14歳からの社会学 世界文化社

 

あたしたち夏バテでちょっとムリ・・・

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