役の気持ちがわかる方法。
ドラマのパターンは2つあります。
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ふつうのどこにでもいる人物【女子高生、会社員、その他】が、とんでもない事件に巻き込まれていく話。
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ふつうのなんでもない日常に、どこか問題を抱えた人物が紛(まぎ)れ込んでいる話。
変わるのは、日常か人物か
1.の場合は、登場人物は自分とあまり変わりませんので、「もしも自分が非日常的な事件(戦争・犯罪)に巻き込まれて、こんな状況になってしまったら、どう反応するだろう」と【自分ならどうする?】と考えていけば、ある程度は対処できます。
問題は2.です。
状況設定【物語の背景】は日常とほぼ同じ。
でも人物の役柄は、自分とは大きくかけ離れている場合は、自分ではなく【この人ならどうする?】と考えていく必要があります。
ヒントになりそうな本がありましたので紹介します。
あえてネット通販のリンクはしません。図書館で借りるか本屋さんで買おうね。
【内容】
「できない」と言えずに、状況を打開できず、「仕方がない」と状況を背負い込んでいく――
状況の打開はさらに困難になるが、それでも、考えても苦しいだけだからと、見ないふりをしつつ、やりすごそうとしていく。実はそういう弱さは、誰でも多かれ少なかれ抱えているものではないか。
虐待で子どもを死なせた親を、自分とは異なる冷酷さに満ちた人物のようにとらえる。あるいは、過労自死に追い込まれた者を、「嫌なら辞めればよかったのに」と見る。そうやって人は、「それは自分とは違う人のことだ」ととらえ、問題を切断しようとする。
しかし、では自分なら同じ状況で、適切に対処できただろうか。
もう少し身近な問題で考えてみよう。
バイト先から、なんとか土曜も入れないか、なんとか日曜も入れないか、としきりにLINEで連絡が来るので、それを断るのが心理的にしんどくて引き受けてしまうという学生。
給与の支払い額が不明瞭なのだけれど、辞めるとは怖くて言い出せず、続けるしかないと考える学生。
交際相手が支配的で心理的に追い込まれるのだが、別れたいと言い出すとどんな目にあうかわからないので、交際を続ける女性。
高圧的な上司にどなられるのだが、なんとか辞めずに働き続けないと生活が破綻すると考える男性。
そんな例は、実は身近にいくらでもあるのではないか。そしてまた自分も、同じように、何らかの困難を抱えつつ、それをやりすごしているのではないか。
そういう状況と、ネグレクト(育児放棄)で子どもを死なせてしまったり、自死に追い込まれたりすることとは、まったく切断された別のことではなく、ひとつの幅をもったグラデーションの中の、色合いの濃さの違いだけではないのか。そうだとすれば、それは、私にとっても、あなたにとっても、ほんとうは他人事ではないはずだ。
つまり、この人は自分とは違うから、と上辺(うわべ)だけ考えて終わりにするのではなく、「この人がこのような状況に追い込まれてしまったのは、どのような背景があるのか」と、もう一歩ふみこんで考えていくことが、役になりきり理解する第一歩だと思いますよ。
参考文献
呪いの言葉の解きかた 晶文社
Voice actor laboratory 声優演技研究所
P.S.
3.人物・日常のどちらも非現実的
これはあるでしょうね。SFファンタジーは言うに及ばず、リアルな戦争ものなどに登場する【少し精神に異常をきたしたキャラ】も当てはまると思います。
ただ「日常の定義」をどこにおくのか?という問題は出てきます。戦争(紛争)が日常、という国もあるでしょうし。
世界中すべての国や人々が、なんの心配もなく演技のことを考えていられる平和な状態が「日常」であってほしいです。
4.人物・日常どちらも現実と同じ
再現ドラマなど、ドキュメンタリータッチの作品が思い浮かびますが、ドキュメンタリーは「なにげない日常に、こんな問題が潜んでいた」という作品が多いですから、演技もさることながら、鋭い観察眼が要求されると思います。
アニメなどフィクション系の作品では、現実と同じに見えて、実は【ほんわか】してる。トラブルや事件を、ほんの少しオーバーに誇張して描いている、などが多いですから、現実そのままというのは、ちょっと思い当たりません…。