声優演技研究所のブログには、【地球温暖化】【人類進化の謎】【戦争反対!】など「演技と関係あるの?」と思える記述がたくさんあります。そこで…
現代音楽の概念とは
現代音楽の定義はいろいろありますが、そのなかの1つに「世の中は音楽であふれている」という考え方があります。
つまり
小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、草原をわたる風の音、潮騒<波の音>など、自然にあふれる音すべてが音楽だ、という概念なんですね。
ピアノやバイオリンが奏(かな)でる旋律(せんりつ)だけが音楽ではない、という考えはそのまま演劇にもあてはまると思います。
映画やアニメ、舞台などを見て演技の勉強をするのはもちろんのこと、もっと視野を広くして、世の中をいろいろ知ることで成長してまいりましょう。
現代音楽には、「音のまったくしない静寂の世界も音楽だ」という「4分33秒」と呼ばれる無音の作品があることはけっこう知られてますね。
そんなことを話しながら、本日は「オンディーヌ」第九場のレッスンを行いました。
この、侍従とオンディーヌ【第九場】を演じるヒントは「本当は恐ろしいグリム童話Ⅱ」の『人魚姫』にありました。抜粋させていただきます。
難しい礼儀作法や言葉使いのレッスン。
たとえば歩き方からして、貴婦人はまるで台車に乗った人形が見えない糸ですーっと引っぱられるように、上体をほとんど動かさず、せまい歩幅で一直線に歩かねばならない。
しかも途中で人に出会うと、相手の出自に応じて、それぞれふさわしい挨拶をせねばならない。たとえば眉をちょっと動かしたり、肩を少し振ったり、深々とお辞儀をしたりと、相手の身分によってさまざまに使い分けねばならないのである。
そして宮廷で暮らしていくためには、そこの無数の貴族や貴婦人たちの身分肩書はもちろん、どこの家系に生まれ、誰と結婚したか、いつ爵位を与えられてどこに領地を持っているか、親族にどんな人がいるかなどを、全部知っていなければならない。
人魚姫は頭がどうかなってしまいそうだったが、これだけではすまなかった。フランス語やラテン語やギリシア語のレッスンも待っていた。海の底ではたった一つの言語で十分なのに、どうして人間にはこんなにたくさんの言語が必要なのだろう。
そして戦いにつぐ戦いで、累々たる死体の山を踏み越えて歩んできた、血の色に染め上げられた人間たちの歴史・・・。どうしてこんなに多くの国に分かれ、互いに領地や富を賭けて争うことが必要なのか。憎しみの渦、嫉妬の渦、欲望の渦・・・。こんなどろどろした感情の中で人間は生きているのか。そう思うと人魚姫は、思わず目をそむけたくなった。
人魚姫は、この上なく自由な娘だった。その心も無垢なままだった。嘘もつけないし、お世辞も言えない。
しかしこんな人魚姫の態度は当然ながら、虚偽とおべっかに満ちた宮廷では、むしろ顰蹙(ひんしゅく)*1をかった。
「オンディーヌ」と「人魚姫」
どちらも水の精の哀しい物語です。いろんな意味でよく似ています。演じるうえでお互いにヒントになる部分がたくさんありますね。
参考文献
挿絵は、アーサー・ラッカム 「ウンディーネ」でした。
Voice actor laboratory 声優演技研究所
*1:人から嫌(きら)われ、さげすまれること。
いやがられ軽蔑(けいべつ)されること。