ズルいけど誠実。
ブレヒト大好き
劇作家のブレヒトはズルい人でした。だけど弱い人の味方でした。
ブレヒトは、ずるく、うまく立ち回って、強いものから巻き上げたものを、弱い立場の人びとにわけあたえたのです。
こんな逸話が残っています。
ブレヒトが二十歳をすぎたばかりのころ、第一次世界大戦の末期に勤務していた野戦病院では、毛布が不足していました。
野戦病院のすぐとなりの倉庫には、毛布が山積みになって眠っていました。
ブレヒトはその毛布を盗んで、傷病兵の手に渡したんです。
だけど盗みは犯罪です。
「毛布が盗まれている」ことが発覚して、その調査を命じられたのは、なんとブレヒトその人でした(笑)。
ブレヒトはきわめて厳格に調査を遂行しましたが、遺憾ながら、ついに毛布を盗んだ犯人は見つからなかったそうです(大爆笑)。
ふつうズルい人は、強いものにすり寄って、弱い立場の人びとを踏みにじります。
ところがブレヒトはまったくの正反対。
強い者たちを手玉に取って、巻き上げたものを弱い人たちにわけあたえるような人だったんです。
まるで鼠小僧次郎吉(ねずみこぞうじろきち)です。今年はネズミ年だけに。
ブレヒトは、ズルく生きて、正しくふるまいました。
その精神はブレヒト演劇の随所にあらわれています。ほんとうの正義ってなんだろうね。あたりまえをうたがえ。
参考文献