超ひも理論
あ・・・おねえさん。今日は何を教えてくれるんですか。
ふっふっふ…聞いておどろけ。
超ひも理論って「パラレルワールド」*1を予測した、宇宙は単一のユニバースではなく【10の500乗個】の宇宙「マルチバース」があるっていう
そう。
この世界は、縦・横・高さの「3次元空間」ではなく「9次元空間」*2
だっていう、あの
・・・そ、そう。
一般相対性理論と量子論を統合した「究極の理論」の有力候補といわれる、あの
なんか王子さま、メッチャくわしくない
超ひも理論とは
自然界をつくりだす“最小部品”を「素粒子」といいます。
物質をどんどん細かく分割していき、最後にたどりつくと考えられている究極に小さい粒子が「素粒子」です。
この素粒子を細長い「ひも」だと考える理論こそ、「超ひも理論」【超弦(ちょうげん)理論】です。
超ひも理論のひもの長さは、理論的には1ミリメートルの100億分の1の、さらに1000億分の1ほどしかないと考えられています。現在の技術では観測できないほど小さいのです。
1個の原子の大きさを、私たちの住む銀河の大きさだとしたら、
ひもの長さはアリの大きさ程度です。
ひもは想像を絶するほど小さいのです。超ひも理論では、人間の体も、テレビのような人工物も、太陽のような天体も、ありとあらゆるものは、無数のひもの集まりだと考えます。
ただし、素粒子がひもでできているという証拠は、みつかっていません。超ひも理論が正しい理論であるという確認がまだとれていないのです。
超ひも理論は、この世界の根本原理にせまる理論だといわれていますが、いまだ完成しておらず、数多くの科学者たちが今まさに研究を進めているんです。
素粒子が点だと問題があった
そもそもなぜ、素粒子の正体をひもだと考える必要があるのでしょうか。
物理学では伝統的に、素粒子を大きさのない「点」とみなしてきました。ところが素粒子が点だと考えた場合、理論と現実との間に矛盾が生じてしまうのです。*3
標準理論【くりこみ理論】の限界
素粒子に大きさをもたせるのではなく、大きさのない点だとしても矛盾を生じさせないようにする計算方法が、1940年代に提案されました。「くりこみ理論」です。素粒子物理学は「素粒子=点」という前提のもと大いに発展していきました。
そして1970年代に「標準理論 (標準模型、標準モデル)」とよばれる、現在の素粒子物理学の基本的な枠組みがほぼできあがりました。
ところが、1980年代に入り、標準理論の“限界”が見え始めます。それは「重力」の問題です。
重力を計算できない
現在、自然界には「電磁気力」「弱い力」「強い力」、そして「重力」という4つの基本的な力が存在することが明らかになっています。*4
しかし標準理論では、「電磁気力」「弱い力」「強い力」については、いっしょに計算することができるのですが、どうしても「重力」を合わせて計算することができないのです。
この標準理論の限界を突破する可能性を秘めた理論が「超ひも理論」です。
究極の理論
現代の科学者たちは、「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」これら四つの力のすべてを、たった一つの力として説明することをめざしています。その完成は物理学者たちの究極の夢なのです。
四つの力を統合した理論は、この世界のさまざまな現象を、簡単に理解できる「究極の理論」だといえます。
究極の理論の完成に向けた大きな課題は、重力にあります。
「量子論」と「一般相対性理論」という二つの理論が統合できていないせいで、重力をうまくあつかうことができないのです。
アインシュタインの相対性理論は正しいが、万能ではない
2大理論の守備範囲
主に素粒子のような ミクロなサイズを対象とします。 |
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主に広大な宇宙のような マクロなサイズを対象とします。 |
量子論とは、素粒子のような、ミクロな世界を支配する物理法則についての理論です。*5
一方、一般相対性理論は、重力についての理論です。*6 主に天体のような大きな<マクロな>スケールでの重力をあつかう理論です。
二つの理論を同時にあつかおうとすると、計算が破たんしてしまいます。
アインシュタインの一般相対性理論で、ミクロな世界での重力を計算しようとすると、計算が破たんしてしまいます。
アインシュタインの理論は正しいけれど万能ではないんです。ミクロな世界では、量子論にもとづいて重力を考えなくてはなりません。
だからこそ量子論と一般相対性理論を統合したような理論が必要になるのです。その有力候補こそ超ひも理論なのですね。
今日は、いろいろ教えていただいてありがとうございました。
王子さまは学校でなんの勉強をしてるの。
M理論です。
超ひも理論には、タイプⅠ、タイプⅡA、タイプⅡB、ヘテロティックSO(32),ヘテロティックE8×E8という五つの種類があります。
エドワード・ウィッテンは、さらにこれら五つの理論の上に立つ「真の究極理論」があるはずだと考え、この理論を「M理論」とよびました。
ただしM理論は、いまだその実態さえはっきりとわかっておらず、ほんとうに「真の究極理論」になり得るかもわかっていません。
現在では「超ひも理論」という言葉は、五種類の超ひも理論にM理論も加えて、より広い意味で使われています。
超ひも理論の「超」とは
超ひも理論の「超」は、単に「すごい」という意味ではない。「超対称性粒子」に由来しているんだ。
超ひも理論の原型となるアイデア「ハドロンのひもモデル」は1960年代後半に登場した。そこに「超対称性」を導入し、ひもの理論が進化してできたのが超ひも理論だ。
重力子は、まだ見つかっていない
素粒子は、現在までに、電子ニュートリノ、クォーク、光子、ヒッグス粒子など17種類が見つかっている。*7
実は、超ひも理論の「超」に由来する「超対称性粒子」も、すべて未発見だ。
素粒子がほんとうに超対称性をもつかどうかは、まだ確認されていないというのが現状だ。
超ひも理論は、完成に向けて研究がつづけられている理論なんだね。*8
参考文献
*1:
パラレルワールド【平行宇宙】
ブレーンワールド仮説では、私たちがいる空間を、高次元空間に浮かんだ3次元のブレーンと考えます。
ブレーンとは?
超ひも理論の研究が進んだ結果、ひもが広がったような“2次元の膜”が、ひもと同様に存在しているらしいことがわかりました。
この膜を「ブレーン」といいます。
ブレーンは、膜を意味する英語であるメンブレーンに由来します。
言葉の由来は2次元の膜ですが、超ひも理論においては、3次元や4次元、果ては9次元に広がるブレーンも存在するのだといいます。そして1次元のブレーンがひもです。
超ひも理論では、私たちが住む宇宙とは、別の宇宙<別のブレーン>が存在するかもしれないと考えられています。
パラレルワールド【平行宇宙】です。
つまり、宇宙が複数存在するかもしれないのです。ほかのブレーンに閉じ込められた“別の宇宙”は、わたしたちの宇宙と同じように星や銀河が存在するかもしれないし、あるいは全くべつの姿をしているかもしれません。ブレーンごとにさまざまな可能性が考えられます。
また、そもそも私たちの住む宇宙とほかの宇宙が、まったく別の高次元空間にある可能性も考えられています。
超ひも理論にもとづいた計算を行うと、こうした物理定数や物理法則のありうるパターンの数は、少なくとも10の500乗通りあることがわかりました。
これは、10の500乗通りの宇宙が存在できることを意味しています。
そしてなんと、複数のブレーン<宇宙>は、重力によってたがいに引き寄せあって接近し、やがて衝突することもありえるといいます。
2001年に提唱された「エキピロティック宇宙モデル」では、宇宙の始まりである「ビッグバン」を、2枚のブレーン<宇宙>による衝突として説明しています。
「エキピロティック宇宙」とよばれるモデルでは、平行な2つのブレーン<宇宙>を含む複数の宇宙<マルチバース>が想定されています。
平行な2枚のブレーン<宇宙>が衝突すると、素粒子の熱い火の玉がつくられます。この火の玉がビッグバンに相当し、私たちの宇宙に物質や構造をもたらしたと考えます。
このモデルは、ビッグバンがおきる前に、私たちのブレーン<宇宙>がすでに存在していたことになり、従来の宇宙論と<注:ビッグバンモデルとは>考えかたが根底からことなります。
【従来の宇宙論】
「ビッグバン・モデル」
ビッグバン以前には時間は存在しなかった。そして、ビッグバン以前には何ごとも起こらなかった。
ビッグバン以前に何が起こったかと尋ねることは、南極の南は何かと尋ねるようなものである。
「振動宇宙モデル」
振動モデルはカール・セーガンが「サイエンス・アドベンチャー」の『ゴットと亀』と題した章で物語った「どこまでいっても亀だ」式の解答によって、最初の原因を回避する。
この章でセーガンは昔の旅人の話を語る。彼は偉大な哲学者に出会い、「世界はどうなっているのか」と尋ねる。
「それは大きな球で、世界亀の背にのっているのじゃ」
「ふーむ。ですが世界亀はどこに立っているんです?」
「ああ、もっと大きな亀の上じゃ」
「なるほど。ではその亀はどこに立っているんですか?」
「鋭い問いじゃな。だが役には立たんよ、お若いの。どこまで行っても亀なんじゃからの」
したがって振動モデルでは、何が宇宙の原因かの答えは「その前の宇宙の崩壊」となる。
宇宙の原因は何か?よろしい、その前の宇宙だ――心配ない。それはどこまでいっても宇宙なのだ。
振動モデルでは、無限回の膨張・収縮サイクルが<宇宙>を形作る。
宇宙は時間にそって真珠をひもで連ねたように、無数のビッグバン・モデルで構成されている。
「宇宙は過去にさかのぼって無限に存在しているため、最初の原因などない」それが振動モデルの理論です。
*2:
次元については、異なる見解も存在します。
プリンストン大学宇宙物理学教授、J・リチャード・ゴットは著書「時間旅行者のための基礎知識」で、こう述べています。
われわれの宇宙は四次元である――空間の三次元と時間の一次元だ。H・G・ウェルズは時間次元をたんなる空間次元の一つのように考えたが、彼は間違っていた。
頁71
超ひも理論は、宇宙には11個の次元があるとほのめかしている――マクロな時間の次元が一つ、マクロな空間の次元が三つ、そしてそれぞれが周囲ほぼ10の33乗センチメートル巻き上げられた空間の次元が七つである。
頁82
参考文献
時間旅行者のための基礎知識 草思社
「四次元時空」とは
実際われわれが住んでいるのは、タテヨコ高さの3つの方向の自由度をもつ3次元空間である。
一方、時間は、過去・現在・未来というひとつの方向しかないという意味で、1次元として考えていいだろう。
アインシュタインの登場以前は、時間と空間は、まったく別な実体だと思われていた。
しかし、アインシュタインが導入した光速度不変の原理によって、一見まったく性質が違うようにみえる1次元の時間と3次元の空間は、実は別々のモノではなく、ひとつのまとまった実体として扱えることがわかった。
それを「4次元時空」とか「4次元時空連続体」などと呼んでいる。
頁82
参考文献
アインシュタインの宿題 大和書房
今回のブログは「最強に面白い!超ひも理論 ニュートンプレス」の見解を参考に作成させていただきました。
*3:
そもそもなぜ、素粒子の正体をひもだと考える必要があるのでしょうか。
物理学では伝統的に、素粒子を大きさのない「点」とみなしてきました。
ところがそのように考えた場合、物理学の計算をする上で問題が生じてしまいます。
たとえば、素粒子である電子は、マイナスの電気をおびています。プラスの電気をおびたものとは引き合い、逆にマイナスの電気をおびたものとは反発します。
このときにはたらく力を「電磁気力」といいます。電磁気力は二つの物体の距離が近いほど強くなります。
電子が点だと、動くことができなくなる
実は、電子がおよぼす電磁気力は、発信源である自分自身にもはたらきます。
電子が大きさをもたない点だとすると、電磁気力の発信源である自分自身との距離はゼロです。
すると計算上、電磁気力が無限大になってしまうのです。
電子に無限大の電磁気力が加わると、結果的にその電子は無限大のエネルギーをもつ(=質量が無限大である)ことになります。
これでは、重すぎて動くことができず、電気はいっさい流れないことになります。
電子(素粒子)が点だと考えると、理論と現実との間に矛盾が生じるのです。
*4:
私たちの住む地球、太陽系、そして広大な宇宙には、基本的な四つの力があるといいます。
四つの力とは、「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の4種類の力のことです。自然界のさまざまな現象は、この四つの力で説明できてしまいます。
*5:
量子力学は20世紀の初頭に原子と分子のふるまいを説明するために発展した物理理論で、粒子がいかに波の性質をもち、波がいかに粒子の性質をもつかを示したものだ。
ハイゼンベルクが唱えた量子力学の不確定原理によれば、どの粒子についても任意の精度で位置と速度の両者を同時に測ることはできない、という。
因(ちな)みにハイゼンベルクは、ナチスドイツの原爆製造計画の責任者でもある。
余談だが、アインシュタインが量子論をきらっていたことはよく知られているぞ。
「神はさいころ賭博師ではない!」そう言ってアインシュタインが量子力学を批判したのは有名だ。
*6:
アインシュタインが1905年にベルンで発表した相対性理論は、重力場がない特殊な場合をとり扱っているので、特殊相対性理論、アインシュタインが1916年にベルリンで発表した相対性理論は、全く一般な重力場が存在する場合をとり扱っているので、一般相対性理論とよばれるようになった。
地球の表面のように、下向きに一様な重力の場が存在する場合には、綱の切れたエレベーターや、自然落下の状態にあるロケットのように、この重力の方向にある一定加速度で運動する実験室を考えることによって、この実験室内を重力のない状態にかえることができる。したがってこのような実験室内では、ベルンで発表した理論があてはまるはずである。
*7:
超ひも理論のひもは1種類のみ
素粒子は現在までに17種類がみつかっています。
しかし、超ひも理論のひもは1種類のみです。
ひもは振動しており、その振動のしかたなどによって、ちがう種類の素粒子にみえるのだと考えられています。
バイオリンの弦が振動のしかたのちがいによってさまざまな音を出すように、たった1種類のひもが、振動のしかたによって世界を構成するさまざまな素粒子にみえるというわけです。
*8:
超ひも理論の正しさを確認するには?
自然界でおきるさまざまな現象や実験結果をうまく説明できて、将来おきることも予言できれば、超ひも理論を「正しい理論」だということができるでしょう。
超ひも理論のひもは、振動しています。ひもの振動がはげしくなると、そのひもに対応する素粒子のエネルギーが段階的にふえて、重くなります。
そして、同じような性質をもちながらも、質量が2倍、3倍の重い別の素粒子が存在することを、超ひも理論は予言しています。
超ひも理論が予言するそのような重い素粒子をみつけることができれば、理論の正しさを裏づける強力な証拠となります。
人工ブラックホールが、高次元空間の証拠になる
超ひも理論に関連して、興味深い予言がなされています。加速器「LHC」を使ってごく小さな「マイクロ・ブラックホール」を人工的につくることができるかもしれない、というのです。
LHCの管の中でほぼ光速まで加速された陽子どうしが正面衝突すると、マイクロ・ブラックホールが形成される可能性があると指摘されています。
ブラックホールは天体がみずからの重力でつぶれ、超高密度になることで誕生します。
LHCで光速近くまで加速した陽子どうしを衝突させると、衝突地点は膨大な質量が集中した超高密度状態と同じとみなせます。
従来の理論ではブラックホールはLHCでも形成できません。
しかし、超ひも理論から派生したブレーンワールド仮説が正しければ、重力が従来の予測よりも強くなり、ブラックホールが形成されやすくなります。
もし今後、実験でマイクロ・ブラックホールの生成が確認されたとしても、それだけで超ひも理論の正しさが証明されたとまではいえません。しかし高次元空間が実在することの証拠にはなります。
また、マイクロ・ブラックホールは、できてもすぐに“蒸発”してしまうと考えられています。
ほんとかニャー。もしも人工ブラックホールが蒸発しなかったら「地球は人工ブラックホールに呑み込まれてしまうかも・・・」という意見も存在します。