シェイクスピア新演出について
「シェイクスピアは時代とともに進化した」の続きだよ。
有名な声優プロダクション養成所の卒業公演で「ロミオとジュリエット」の新解釈・新演出を見たことがあります。
ご存知のように、ロミオとジュリエットは悲劇的な最期を迎えます。
おたがいにいがみ合っていた両家は反省し、二度とこのようなことが起らないよう和解する、というのがシェイクスピアの原作です。
しかし声優プロダクション養成所の新解釈版「ロミオとジュリエット」は、ついに両家は怒りを爆発させ、おたがいにペットボトルを投げ合うという「核戦争」をイメージさせる正反対の演出で幕を閉じました。
同じような記述が「遺書を書くシェイクスピア」にもあります。
東京グローブ座で、スエーデン王立劇団の『ハムレット』を見た。イングマール・ベルイマンの演出である。*1
ハムレットは筋書き通りに復讐をとげるが、毒の廻(まわ)って足のふらつくハムレットを援助するかのごとく、先王ハムレットの亡霊がクローディアスをうしろから羽交い絞めにして、ハムレットの剣を受けさせる。
最後の場面ではフォーティンブラスに率いられ、迷彩服をまとって近代兵器をたずさえたノルウェー軍が乱入し、ホレイシオーの台詞を打ち切るようにして物蔭に引きずり込み、射殺してしまう。
ハムレットの遺骸はたしかに四人の兵士によって運び出されるが、武人に対する礼は感じられない。
因(ちな)みにシェイクスピアの原作では、こうなります。
クローディアスの陰謀によって、ハムレットとレアーティーズのフェンシング試合が企画される。
レアーティーズの剣には毒が、さらにはハムレットに与えるべき杯(さかずき)にも毒が投じられている。
試合はハムレット優勢のうちに進行する。
あせったクローディアスの思惑とは逆に、毒杯は王妃ガートルードが、知るや知らずや、飲みほしてしまう。
レアーティーズはがむしゃらにハムレットに突っかかり、手傷を負わせる。
興奮したハムレットと取っ組み合いとなり、彼はとり違えた毒剣でレアーティーズを刺す。
そのとき王妃ガートルードは倒れる。
瀕死のレアーティーズから元凶はクローディアスと聞かされたハムレットは、渾身の力を振り絞ってクローディアスに突進し、復讐をとげたあと、王位をノルウェー王フォーティンブラスに譲(ゆず)ることを宣言し、後を親友ホレイシオーに託して絶命する。
そこへフォーティンブラスに率いられたノルウェー軍が登場。
フォーティンブラスは思いがけぬ幸運を歓迎しながらも、ハムレットの死を悼み、手厚く葬ることを部下に命じる。
参考文献
シェイクスピアにかぎらず、演劇は時代とともに変化しています。
新解釈・新演出については「落語」をイメージしてくださればわかりやすいと思います。
現代にマッチした新解釈を加味した「現代風の古典落語」*2を語る噺家さんたちがいる一方で、昔そのままの「古典落語」にこだわる噺家さんも存在します。
どちらがいいか悪いか、ではなく「両方ともおもしろいし、どっちも必要だよね」と私は思っています。*3
新型コロナウイルス、早く終息して、レッスン再開したいです。それでは、また。
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