動物会議
ある日、動物たちはもう、がまんできなくなりました。
ライオンのアイロスは、たてがみをゆすりながら、いいました。
「ああ、あの人間たちときたら!ぼくのたてがみがこんなに金色でなかったら、腹が立って、たちどころにまっかになるところだが!」
「人間ときたら、何をしでかすんだろう?」
「戦争さ!」
ライオンのアイロスがうなりました。
「戦争をしでかすのさ。」
「ぼくはただ人間の子どもたちが気のどくなんだよ。」
と象のオスカールはいって、
「いつも子どもたちは、戦争だ、革命だと、ひどいめにあうんだ。」
「それなのに、おとなたちは、何ごとも、子どもたちが将来しあわせになるためにやったんだ、なんていうんだ。*1ずうずうしい話じゃないか。」
「人間たちのあいだでは、どこにいっても、苦しみとばかげたことだらけだ。」
「ただひとり、そういうみじめさとごたごたを見ようとしない動物がいる。」
「――それはダチョウだ。ダチョウは、頭を砂の中につっこんでいる。」
「ただ一部の人間たちだけが、りこうになろうとはしないのだ。そいつらは政治をし、おしゃべりをし、会議をひらいている・・・」
「わかったわ。その人たちは頭を砂の中につっこんでいるんでしょう。」
ナチスによる焚書
「動物会議」の作者ケストナーの本は、ヒトラーのひきいるナチスがドイツを支配すると、トーマス・マンなどの本と一緒に、1933年5月10日、公衆の面前で焼かれてしまいました。
本を焼かれた作家は二十数人ありましたが、ケストナーは大胆にもその現場をこっそり見に行ったそうです。*2
ケストナーすごい
「動物会議」は子ども向けの本ですが、大人にも読んでほしい一冊です。おすすめします。
参考文献
動物会議 岩波書店