ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

動物会議

f:id:seiyukenkyujo:20200401211030j:plainある日、動物たちはもう、がまんできなくなりました。

 

ライオンのアイロスは、たてがみをゆすりながら、いいました。

f:id:seiyukenkyujo:20200401211107j:plain「ああ、あの人間たちときたら!ぼくのたてがみがこんなに金色でなかったら、腹が立って、たちどころにまっかになるところだが!」

 

f:id:seiyukenkyujo:20200401220016j:plain「人間ときたら、何をしでかすんだろう?」

 

f:id:seiyukenkyujo:20200401211107j:plain「戦争さ!」

ライオンのアイロスがうなりました。

「戦争をしでかすのさ。」

 

f:id:seiyukenkyujo:20200401223852j:plain「ぼくはただ人間の子どもたちが気のどくなんだよ。」

と象のオスカールはいって、

「いつも子どもたちは、戦争だ、革命だと、ひどいめにあうんだ。」

f:id:seiyukenkyujo:20200401212110j:plain「それなのに、おとなたちは、何ごとも、子どもたちが将来しあわせになるためにやったんだ、なんていうんだ。*1ずうずうしい話じゃないか。」

 

f:id:seiyukenkyujo:20200401224415j:plain「人間たちのあいだでは、どこにいっても、苦しみとばかげたことだらけだ。」

f:id:seiyukenkyujo:20200401212006j:plain「ただひとり、そういうみじめさとごたごたを見ようとしない動物がいる。」

f:id:seiyukenkyujo:20200401212217j:plain「――それはダチョウだ。ダチョウは、頭を砂の中につっこんでいる。」 

 

f:id:seiyukenkyujo:20200401212245j:plain「ただ一部の人間たちだけが、りこうになろうとはしないのだ。そいつらは政治をし、おしゃべりをし、会議をひらいている・・・」

 

f:id:seiyukenkyujo:20200401221530j:plain「わかったわ。その人たちは頭を砂の中につっこんでいるんでしょう。」

 

ナチスによる焚書

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「動物会議」の作者ケストナーの本は、ヒトラーのひきいるナチスがドイツを支配すると、トーマス・マンなどの本と一緒に、1933年5月10日、公衆の面前で焼かれてしまいました。

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本を焼かれた作家は二十数人ありましたが、ケストナーは大胆にもその現場をこっそり見に行ったそうです。*2

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ケストナーすごいf:id:seiyukenkyujo:20190807012905g:plain

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「動物会議」は子ども向けの本ですが、大人にも読んでほしい一冊です。おすすめします。f:id:seiyukenkyujo:20190822184423g:plain

参考文献

動物会議 岩波書店

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www1.odn.ne.jp

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*1:

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このロジックは、1月21日のブログで紹介した

『平和のために戦わなければならない。この戦争は平和のための戦争だ』という「戦争プロパガンダ10の法則」と同じですね。

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劇作家のブレヒトさんは、「強いものが、戦争によって理想の世界を築けるのであれば 『我こそは!』という者が次々に現れて、永久に戦争はなくならず、平和にはならないよ」と述べています。

*2:

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わたしの大好きなブレヒトさんの本も、同じ日ナチスに焼かれてしまいました。

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ただブレヒトさんは焚書に先立つ1933年2月28日にドイツを脱出していましたので、この現場には居合わせませんでした。