赤ちゃんから学ぶ深層心理
日常観察と演技の関連性
赤ちゃんは大人のようにウソをついたりごまかしたりしません。
そんなこともあって赤ちゃんや子どもたちを観察していると演技のヒントになることがけっこうあります。
お父さんと鬼ごっこ (追いかけっこ) をしている3歳くらいの女の子がいました。
女の子はお父さんに追いかけられて、きゃーきゃーはしゃいで一生懸命にげますが、ついにつかまってしまいました。ですが女の子は大喜びです。顔いっぱいに笑みをうかべて満足そうです。
そこで思いあたることがありました。
生徒の赤ちゃんです。
じつは朗読劇「コーカサスの白墨の輪」で赤ちゃんの笑い声がどうしてもほしかったので、くすぐって笑わせたことがあったんです。
思った以上に大笑いをしてくれたんでいい録音ができたのですが、
実はそのあと、赤ちゃんのお母さんの相手役を演じたんです。その役とは「おかあさんのことを怒る役」。あくまでもお芝居の台本通りにお母さんを怒る演技をしたんですね。
そうしたら赤ちゃんは悲しそうな表情でわたしを見ていて、ついには顔をそむけられてしまいました。
まだ演技と本当のことの区別がつかないんで仕方ないんですけど、赤ちゃんに機嫌をなおしてもらおうと、さっきと同じようにくすぐってみたところ…
まったく笑わない。
いやがったりこそしませんでしたが、まったくの無反応でした。
そこで気がつきました。
さっきは、くすぐったくて笑ってたんじゃないんだ。くすぐったくはなかったんだ。鬼ごっこをしていた女の子と同じで、うれしくて楽しいから笑っていたんだ。
行為は同じでも反応は真逆
それって、「かっこいい男と同じことを言ったのに」というセクハラの定義とおなじ・・・
そこを掘り下げるのはよしましょう。かなしくなるだけです。
こういうことに気がつくと、登場人物の本当の気持ちが見えてきて演技がリアルになってくるよ。