ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

おれに関する噂

ある日ふつうの人が有名人に!

NHKテレビのニュースを見ていると、だしぬけにアナウンサーがおれのことを喋(しゃべ)りはじめたのでびっくりした。


「次は国内トピックス。森下ツトムさんは今日、会社のタイピスト美川明子さんをお茶に誘いましたが、ことわられてしまいました。森下さんが美川さんをお茶に誘ったのは今日で五回目ですが、一緒にお茶を飲みに行ったのは最初の一回だけで、あとはずっとことわられ続けています」


「ん。なんだ何だなんだ」

おれは茶碗を卓袱台(ちゃぶだい)にたたきつけるように置き、眼を丸くした。

「なんだ。これはいったい、なんだ」

 

f:id:seiyukenkyujo:20200307081254j:plain

この物語の主人公は、人助けや大発見、もしくは悪いことをしたわけでもないのに、ある日とつぜん有名人になってしまいます。

 

翌朝、新聞の社会面におれのことが出ていた。

 

美川さん、森下さんの誘いを拒否

 

混雑した通勤電車に乗り、おれは隣に立っている男が読んでいる新聞にふと眼をやった。

おれの記事が出ていた。

はらわたが煮えくり返るような怒りに襲われた。

おれは満員電車の濁った空気を肺一杯にすいこんだ。

くそ。その手には乗らんぞ。発狂なんかしてやるものか。

 

「わははははははは」

おれは高笑いをした。そして怒鳴った。

「誰が、だれが発狂なんかするものか。おれは正気だ。わはははははははは」

f:id:seiyukenkyujo:20190911174426p:plain

この小説が発表された当時は、筒井先生お得意のドタバタSFといった印象でしたが

f:id:seiyukenkyujo:20190911173809p:plain

現在のSNSが発達した世の中ではもしかしたら誰もが同じ目に・・・という読み解き方もできちゃう、ちょっと怖いお話にも感じます。

f:id:seiyukenkyujo:20190825185327j:plain

たまたま名前が同じだった、というだけで、ひどい目にあったという事件が現実にありましたからね。

f:id:seiyukenkyujo:20190812164644p:plain

時代の変化とともに、小説の解釈も変わってくるんですね。おすすめします。

参考文献

おれに関する噂 新潮文庫

f:id:seiyukenkyujo:20190913095705p:plain

www1.odn.ne.jp

f:id:seiyukenkyujo:20190913095427p:plain