「表現」と「表出」
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社会学者の宮台真司さんが「表現」と「表出」について論じておられました。
宮台さんは、演劇とは関係ない意味で述べられたのですが、この理論、演劇にあてはまります。
〈感情の劣化〉とは、簡潔に述べると、真理への到達よりも、感情の発露の方が優先される感情の態勢です。
つまり、最終的な目的が埒外(らちがい)になってしまい、過程におけるカタルシスを得ようとする傾向。
別の言い方だと、感情を制御できずに、〈表現〉よりも〈表出〉に固着した状態です。
ちなみに〈表現〉の成否は相手を意図通りに動かせたか否かで決まり、〈表出〉の成否は気分がスッキリしたか否かで決まります。
あるアニメのプロデューサーさんから言われたことを、宮台さんの理論を読んでいて思い出しました。プロの劇団とアマチュアの違いについてです。
プロの劇団とアマチュアの違い
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プロの劇団とは
お客さんを感動させられる集団。 -
アマチュアとは
お客さんではなく、自分が感動している集団。
宮台さんの理論にあてはめてみましょう。
〈表現〉の成否は相手を意図通りに動かせたか否か
つまり「この場面ではお客さんを笑わせよう」「ここでは涙してもらおう」と、自分の演技プラン通りに観客の気持ちをコントロールできるからこそ、お客さんを感動させられる。それがプロの劇団。
〈表出〉の成否は気分がスッキリしたか否か
ここで笑ってもらおう、泣いてもらおうと思っても、演技力がないため観客に伝わらず感動させることができなかった。でも自分は精一杯やったからスッキリしている。満足だ。それがアマチュア。
「表現」と「表出」おぼえておこうね。