台詞の答えは別のページに?
昨日のブログの補足だよ。
ベルタの台詞
このセリフを「わたしにはハンスの出世のサポートができる力があると思う」と昨日のブログで解説しました。
なぜそのような解釈が成り立つのか
実はこのセリフだけではわかりません。
この解釈の根拠は、オンディーヌの別のページにあったんです。
この場面でハンスはテーブルの席順がサルムの下、四番目になったのはなぜなのか、侍従に疑義を申し立てています。つまりハンスは「出世にこだわっている」んです。
1.ハンスが出世にこだわるのは、ベルタにそそのかされて考えが変わってしまったからなのか?
2.それとも最初から出世にこだわっていたのか?は、解釈が分かれると思います。
しかし、そのどちらにしても、この場面でハンスがこのような行動をとるきっかけになったのは、ベルタのセリフが原因だと考えられるのですね。
そんなハンスにオンディーヌは、「出世にこだわらなくてもいいじゃない」「出世してもしなくても、わたしがあなたを思う気持ちは変わらないよ」
そしてベルトランも「そのとおりだ。出世にこだわるなんて馬鹿げてる」とオンディーヌに同調しているんですね。
なんと夢のような子じゃろう。涙が出ますね。
役を自分のこととして演じる
「最近の若者は、むかしにくらべて出世にこだわらなくなっている」という世論調査を耳にしたことがあります。
そういう人たちでしたら、オンディーヌやベルトランの気持ちは理解しやすいでしょうね。
その反面、出世にこだわるハンスの気持ちは理解しがたく、「ハンスはつまらない男」として演じてしまうことも考えられます。
そんなあなたに、出世にこだわるハンスの気持ちを「自分のこと」として正統性をもって演じられる方法をお教えします。
あなたがプロダクション付属の声優養成所に通っていると仮定しましょう。そのプロダクションに所属できるのは3人までだったとしたら・・・
4番目になってしまったハンスの気持ちを理解できると思いますよ。
これは高校・大学の受験の順位や、会社の入社試験におきかえてかまいません。そうやって考えることで、架空の人物である物語の役をリアルに演じられるようになるんですね。
因(ちな)みにオンディーヌは、出世について意見を述べているのであって、「仕事をしなくてもいいよ」といっているわけではありません。
オンディーヌの台詞
あたしお料理見たんだから。牛がまるまる四頭よ、たっぷり全員ぶんあるわよ。
つまりオンディーヌは「仕事をクビになるわけじゃないよ」といっているんですね。
登場人物を「善と悪」にわける作品はいまでも存在します。今後もなくなることはないでしょう。
だけどその概念は誰でも理解できます。わざわざ勉強しなくてもみんな知っています。
気がつかなければならないのは、「主人公とライバル、どちらも正しい」という作品もあるということです。そういう概念は勉強しなければ理解できません。
いろんなことを知って、演技派の声優をめざしましょう。
参考文献
オンディーヌ 光文社古典新訳文庫