マッチ売りの少女の真実
質問メール
他の声優養成所に通っている者です。
今日、演技のレッスンがありました。
今はマッチ売りの少女をやってます。
実は感情のこもった演技が出来なくてレッスンで何度か感情入れたんですが、先生に「感情がはいってないよ」と言われてしまいました。芝居に必要なのに、感情移入が出来なくて落ち込みました。
声優演技研究所からの返信
そこで落ち込むんじゃなくて、先生に「どうすれば感情の入った演技ができるようになりますか?」と質問してみましょうね。
さらなる質問メール
それが先生には質問がしづらいんです。
レッスンが終わったあとに質問できないんです。アクセントに困った時は、付録見ろしか教えてもらえませんでした。
声優演技研究所からの返信
それは困りましたね。
しかしあなたは私の生徒ではありませんから、なんで演技に感情がこめられないのか、根本的な原因が分かりませんので的確なアドバイスができません。
あなたの演技を見てないわたしに質問されても、推測で答えることしかできないんです。
ですので、文章の深読みについてお話します。
マッチ売りの少女の真実
「マッチ売りの少女」はメリー・クリスマスのまぼろしを見ながら、新年の希望にそむいて、寒い大みそかの夜にこごえ死んでいく。
この童話には現実の裏づけがあった。
アンデルセンのお母さんは、子どものころ両親から、物ごいしてきなさいと、往来にかり出され、一日じゅう橋の下で泣いていたという思い出を彼に語って聞かせた。その話にもとづいてるのである。
アンデルセンの生まれたデンマークは、このころナポレオン戦争で敗れ、経済危機におちいります。
「マッチ売りの少女」は、当時のデンマークの社会状況をあらわしていると言われています。
新年の朝、少女はほほえみながら死んでいました。
集まった町の人々は、
「かわいそうに、マッチを燃やして暖まろうとしていたんだね」
と、言いました。
ここから見えてくること
少女が救いを求め、たすけてほしいと願っているときには目もくれず、少女が死んでから「かわいそうに」という町の人々・・・。
アンデルセンが、この童話を書いて200年たった現在、人びとの意識は変わったのでしょうか。コロナが蔓延した今年、経済困窮者に対して支援の手がスムーズに差し伸べられる住みやすい世の中になったのでしょうか。
少女は、本当におばあさんのもとに行きたかったのでしょうか。少女の本当の気持ちはどうだったのでしょう。
もしかすると、「こうなった以上、おばあさんのもとに行くしか道はない…。それ以外の選択肢は、もはや少女には残されていなかったのかも」という解釈は成り立たないでしょうか。
そうやって考えていくと、少女に感情移入ができて、演技の表現に深みが出てくると思いますよ。それを「どうメルヘンの表現に昇華していくのか」
アンデルセンは、お母さんから聞いた話を「童話作家として」メルヘンに昇華し世の中に発表しました。
あなたは「演劇人として」アンデルセンがやったのと同じことを目指してください。
ご健闘をお祈りします。
因(ちな)みにデンマークは失敗を教訓にして現在、医療費無料、出産費無料、教育費無料、充実した高齢者サービスなど、社会福祉がとても充実した、「ゆりかごから墓場まで」国が面倒を見てくれる福祉国家として生まれ変わったことを付け加えておくぞ。
あたりまえをうたがえ
お気づきと思いますが 「~である!」のような断定ではありません。「~ではないでしょうか?」という【疑問形】です。
「もしかしたら…」と疑問をもつことで、それまでの既成概念を打ち破り、新たな視点で物事を見つめられるようになります。
それが文章の深読みに繋がっていきますよ。
日本人は考え方を学校で教わってない!
2019.07.10 のブログ「役がら・立場・根拠を考える」よろしければ、ぜひ!
どこの養成所か知らねーけど、このくらいのアドバイスはしろよ。金(月謝)もらってんだろおれ、この質問者から金もらってねーよ。ただでアドバイスしているよ。【完全なグチです】
毒を吐いてスッキリしたところで
「実際に見てみないとよくわからない」といったのは、文章を解釈したあと、どう表現していくかという作業があるからです。
たとえば滑舌でも、口の筋肉が弱いのか、舌の筋肉なのかでトレーニングの方法が変わります。表現するには、あなたの場合どこをどうすればいいのか。それは生徒の演技を実際に見ないとわからないんですね。
人は「考え方」を手に入れたとたん、頭が良くなる生き物である。君にできないはずはない。が、キャッチフレーズの「テストの花道」というテレビ番組がありました。声優演技研究所は、そんなレッスンを心がけています。
あと、町山さんの解説が目標
参考文献
マッチ売りの少女 福娘童話集
グリム兄弟とアンデルセン 東京書籍
おとなになって読むアンデルセン メトロポリタンプレス
考察
どこの養成所かわかりませんが (ホントに知らない) なぜ今「マッチ売りの少女」を練習題材に選んだのかを【好意的に】解釈すると、現在の日本の状況を憂いてのことなのかなぁなんて考えてます。
では、わたしだったらどんな戯曲を練習題材に選ぶか。
イプセンの「人形の家」とブレヒトの「セチュアンの善人」ですね。
なぜ、「人形の家」と「セチュアンの善人」が現在の日本の状況を憂いていると思えるのか?ぜひご一読をお勧めします。すっごくおもしろいよ。