ニュートンは錬金術師だった?
ニュートンといえば、万有引力の法則とリンゴが真っ先に思い浮かびます。*1
しかしニュートンには、もうひとつ別の顔がありました。
ニュートンのトランクと錬金術
ニュートンの最愛の姪、キャサリン・コンデュイットは、叔父のニュートンが死ぬときに遺言執行人の役目を果たし、遺品の中でも特に、ニュートンが前半生を過ごしたケンブリッジ大学を退職して以来ずっと手許に置いていたトランクをとっておくことにしました。
ある司教がトランクの中身を調べることになったのですが、彼は <恐怖におののいて>、荒々しくふたを閉めてしまいました。
つまり、トランクの中身は「謎」のままだったのです。
そのトランクは1936年までニュートンの親せきが保管していましたが、その年、キャサリンの血筋を引くリミントン卿が競売にかけてしまいました。
イギリスの有名な経済学者ジョン・メイナード・ケインズ*2は、この <孝行心が欠如した行為> に憤慨し、中身の大部分を買い戻しました。
そして謎の中身は「錬金術と神学に関して書かれた数千ページもある手稿」だったのです。
秘教的なことが書かれているこの手稿は、ニュートンの科学関連の著作とほとんど同じくらいの量がありました。彼はケンブリッジの研究室で、生命の秘密を解き明かす研究にいそしんでいたのです。
仕事部屋に入ることを許されたただ一人の助手が書いたものによると、炉の火は「春と秋には六週間以上も絶やされることがなかった」といいます。
そうやってニュートンは、レトルトに囲まれ、炉の火をかき立て、“植物の精”を分離しようとしたのです。
この植物の精というのは、生物または鉱物の一部で、<並はずれて繊細で、想像できないほど小さく、それなしでは地球が死んで生気を失ってしまうだろう>ものだそうです。
ケインズは、賢者の石を表している神秘的な図表の中に、次のようなものも見つけています。それは、錬金術師たちに知られていたすべての物質を目録にした『インデクス・ケミクス』と、聖書から抜粋した文章にさまざまな言語での意味を添えた長いリストでした。
ニュートンは、従来の教義はゆがめられていると確信し、科学の分野で彼の研究を成功に導いた分析力と集中力をもって、その教義がもつ本来の意味を追求しようとしたのですね。
万有引力の法則を発見したのも、賢者の石を探し求める錬金術師の姿も、同じニュートンです。
だけど、アニメや演劇の視点で見つめますと、トランクの中に隠された【錬金術師ニュートン】こそ、謎にみちて魅惑的であると感じてしまいますね。
参考文献