薔薇の幽霊 と 薔薇の家
少女向けに書かれた川端康成の、心温まる作品を紹介します。
薔薇の幽霊 (昭和二年発表)
山あいの村に一軒だけある借家「薔薇(バラ)の家」には幽霊が出るんです。
でも悪い幽霊ではありません。
心優しい幽霊さんは、薔薇の家に住んでくれた人が気持ちよく暮らせるように、いろいろ気を使ってくれたりするんです。
とってもいい幽霊さんなんです。
「薔薇の幽霊」は、主人公の片岡千代子先生と、若くして亡くなった少女の幽霊との心温まる幻想小説です。
薔薇の家 (昭和九年発表)
「薔薇の幽霊」と、ほとんど内容は同じです。登場人物の名前や、南や北に植えられたバラの色がちょっと違うくらいです。
しかし大きく違うのは「薔薇の家」は幻想文学ではありません。
幽霊は出てこないんです。
「幽霊が出るという噂の家がある…だけどよく調べてみると、幽霊ではなかった」は【探偵小説】によくあるパターンですが、そのような構成になっているんですね。
ファンタジー小説かと思っていたら、リアリズム小説でした、というのが「薔薇の家」です。
正反対な結末なのに、どっちもおもしろいです。どちらの作品も20ページくらいの短編です。あっという間に読めますよ。文句なしにおすすめします。
参考文献
川端康成全集 第十九巻 新潮社