妹萌え💗
孤児の感情 川端康成
父母が死んだ夏から、四歳の私と一歳の妹とは、別々の家に引取られて大きくなった。
幼い頃の私は父母が死んだことも忘れていたし、妹が生きていることも忘れていた。
だから、田舎の家の縁側に七歳の私と並んで焼栗(やきぐり)を食っている女の子、その日初めて見る都会風な女の子が、ぽんと天から降った妹であることに、私は面喰らった。
そして、妹が十五の頃から私は故郷に帰らない。最後に会った時、妹はもう女学校に通っていた。
———その妹に結婚の話が持上った。相手の男は東京にいる。その人に会ってみるために、東京へ来て私の下宿に泊る。
停車場で五年振りに見る妹は、顔と姿が美しい、結婚期の娘であった。
萌えだ。 これは妹萌えだ。
自分好みの美人に成長した妹と、ひとつ屋根の下…どころか「同じ部屋」で寝起きすることになった兄は、妹の寝顔を眺めながら悶々(もんもん)と悩むのです。
妹は毎晩私より二時間さきに寝床に入る。
髪の豊かな色の白い女とでなければ、私は断じて結婚しない。———こんなことを私はしきりに考えている。妹が髪の豊かな色の白い女だからである。
あちらを向いた妹の寝顔を見て考えている。
「こいつは馬鹿だ。反省と懐疑ということを知らない馬鹿だ。」
男と床を並べて、よく平気で眠れたもんだ。妹という概念に安心しているのだ。
兄妹ではあっても、一つの家に寝るなぞは生れて初めてであるし、
兄妹であるからという気持も、私達の場合には、人間の感情の因習を概念的に信じることに過ぎないのだ。
私は父や母を見た覚えもない。
千代子が私の妹であるとは思えても、
しかし、若(も)しそれを忘れてしまったら————。
——でも、やっぱりその先にはいかないんですね・・・。
川端文学に登場する男たちは、「雪国 (島村)」や「海の火祭 (新一)」「山の音 (修一)」のような例外(!)を除いては、どちらかというと、奥手でシャイな男性が多いです。
だからある程度、展開は予想してましたが・・・。
もうちょっと強引に行動してほしかったニャ。
き・・・近親相姦
純文学、純文学。