ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

母の初恋と非常

非常 川端康成

———「お前との約束はあったかもしれないが、この女はおれのものになっている。」

「いや、この女を愛する愛し方を知っているのはおれ一人だ。」

しかしみち子は、その男をかばい、眉(まゆ)をそびやかして高らかに私を笑う。

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「非常」(昭和13年12月) のここの文章は、おなじ川端康成の「母の初恋」(昭和15年1月) を思い起こさせます。

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「非常」も「母の初恋」も【ちよもの】と呼ばれる川端康成の作品群のひとつです。

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【ちよもの】の特徴に、「小説のどこかが、他の【ちよもの】と微妙にリンクしている」という点があります。

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「母の初恋」は大好きな小説のひとつです。

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「非常」は、「母の初恋」の姉妹編であり、ある意味ウラ話のような小説でもありますね。おすすめします。

非常/寒風/雪国抄 巻末の解説より

「非常」は、川端が初恋の女性に綴った投函されなかった恋文が発見されたという話題で、一躍注目された短篇である。

川端は大正十年、二十二歳のときに本郷のカフェ・エランで女給をしていた伊藤初代(六歳年下)と恋愛して婚約までするが、彼女の方からの謎の絶縁の手紙が届き、その関係はあっけなく破綻する。

大正十三年十二月に発表した短篇「非常」で初代(作中ではみち子)からの手紙に「私はあなた様とかたくお約束を致しましたが、私には或る非常があるのです。それをどうしてもあなた様にお話しすることが出来ません」と記されていた、とある。

発見された川端の投函されなかった「恋文」からは初代への真剣な求愛が溢れているが、この失恋事件は、「非常」のほかにも「篝火」(大正十三年)、「彼女の盛装」(大正十五年)、「南方の火」(大正十二年~昭和九年)等々の作品で繰り返し書かれている。

十五歳で祖父を失い、天涯孤独の少年となった川端が結婚と家庭を性急に求め、それが破綻したことが深い痛手となったのは想像に難くない。

引用
非常/寒風/雪国抄 川端康成傑作短篇再発見 講談社

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www1.odn.ne.jp

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