丙午(ひのえうま)の娘は魅力的💗
南方の火 川端康成
「午(うま)が祟(たた)っていたんですわね。」
自分が丙午(ひのえうま)生まれのことを思い出しているのである。
「丙は陽火なり。午は南方の火なり。」と「本朝俚諺(りげん)」に出ている。火に火が重なるから激し過ぎるというのだ。
弓子は火の娘なのだ。
———美しくて、勝気で、強情で、喧嘩好きで、利口で、浮気で、移り気で、敏感で、鋭利で、活発で、自由で、新鮮な娘、こんな娘が弓子と同い年の丙午生まれに不思議に多い、丙午の娘は戦いの娘だ。
彼女らが男を殺すのは当然である。
「南方の火」川端康成
彼女らが男を殺すのは当然である。
殺すとは、いい意味の比喩(ひゆ)である。私は丙午の娘の悪口を云ったのではない。彼女らが最もよき女性であることを讃美(さんび)したのである。
「丙午(ひのえうま)の娘讃(さん)」川端康成
知識がふえれば深読みにつながる
美しくて、勝気で、強情で・・・。これって僕の大好きな「美しさと哀しみと」の坂見けい子と「女であること」のさかえちゃんの性格とまったく同じです。
川端康成も、丙午の娘に抗(あらが)いきれない魅力を感じていたのでしょう。
そう思ったのは、僕が「美しさと哀しみと」と「女であること」を先に読んでいたからかもしれません。
「南方の火」を先に読んでいたら、今回引用した文章は「たんなる丙午(ひのえうま)の迷信」として読み飛ばしてしまったことも考えられます。
つまり、知っていることが増えれば、気がつくことも増えて、結果的に文章の解釈も深まっていくと思いますよ。
因(ちな)みに、弓子という名前は「浅草紅団」*1 に出てくる不良少女のボスと同じ名前です。「浅草紅団」の弓子も鋭い刃物のような娘でしたね。