ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

丙午(ひのえうま)の娘は魅力的💗

南方の火 川端康成

「午(うま)が祟(たた)っていたんですわね。」

自分が丙午(ひのえうま)生まれのことを思い出しているのである。

「丙は陽火なり。午は南方の火なり。」と「本朝俚諺(りげん)」に出ている。火に火が重なるから激し過ぎるというのだ。

弓子は火の娘なのだ。

———美しくて、勝気で、強情で、喧嘩好きで、利口で、浮気で、移り気で、敏感で、鋭利で、活発で、自由で、新鮮な娘、こんな娘が弓子と同い年の丙午生まれに不思議に多い、丙午の娘は戦いの娘だ。

彼女らが男を殺すのは当然である。

「南方の火」川端康成

彼女らが男を殺すのは当然である。

殺すとは、いい意味の比喩(ひゆ)である。私は丙午の娘の悪口を云ったのではない。彼女らが最もよき女性であることを讃美(さんび)したのである。

「丙午(ひのえうま)の娘讃(さん)」川端康成 

知識がふえれば深読みにつながる

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美しくて、勝気で、強情で・・・。これって僕の大好きな「美しさと哀しみと」の坂見けい子と「女であること」のさかえちゃんの性格とまったく同じです。 

川端康成も、丙午の娘に抗(あらが)いきれない魅力を感じていたのでしょう。

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そう思ったのは、僕が「美しさと哀しみと」と「女であること」を先に読んでいたからかもしれません。

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「南方の火」を先に読んでいたら、今回引用した文章は「たんなる丙午(ひのえうま)の迷信」として読み飛ばしてしまったことも考えられます。

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つまり、知っていることが増えれば、気がつくことも増えて、結果的に文章の解釈も深まっていくと思いますよ。

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因(ちな)みに、弓子という名前は「浅草紅団」*1 に出てくる不良少女のボスと同じ名前です。「浅草紅団」の弓子も鋭い刃物のような娘でしたね。

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www1.odn.ne.jp

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*1:

「浅草紅団(くれないだん)」

昭和はじめの浅草を舞台にした川端康成の都市小説。

不良集団「浅草紅団」の女首領・弓子に案内されつつ、“私”は浅草の路地に生きる人々の歓び哀感を探訪する。

カジノ・フォウリイの出し物と踊子達。浮浪者と娼婦。

関東大震災以降の変貌する都会風俗と、昭和恐慌の終末的な不安と喧騒の世情をルポルタージュ風に描出した昭和モダニズム文学の代表作。