太宰治とアルテミスとオリオン
カチカチ山 太宰治
ギリシヤ神話には美しい女神がたくさん出て来るが、その中でも、ヴイナスを除いては、アルテミスという処女神が最も魅力ある女神とせられているようだ。
ご承知のように、アルテミスは月の女神で、額(ひたい)には青白い三日月が輝き、そうして敏捷(びんしょう)できかぬ気で、一口で言えばアポロンをそのまま女にしたような神である。そうして下界のおそろしい猛獣は全部この女神の家来である。
けれども、その姿態は決して荒くれて岩乗(がんじょう)な大女ではない。
むしろ小柄で、ほっそりとして、手足も華奢(きゃしゃ)で可愛く、ぞっとするほどあやしく美しい顔をしているが、しかし、ヴイナスのような「女らしさ」が無く、乳房も小さい。
気にいらぬ者には平気で残酷な事をする。
自分の水浴しているところを覗き見した男に、颯(さ)っと水をぶっかけて鹿にしてしまった事さえある。
水浴の姿をちらと見ただけでも、そんなに怒るのである。手なんか握られたら、どんなにひどい仕返しをするかわからない。
こんな女に惚れたら、男は惨憺(さんたん)たる大恥辱を受けるにきまっている。けれども、男は、それも愚鈍の男ほど、こんな危険な女性に惚れ込み易いものである。そうして、その結果は、たいていきまっているのである。
疑うものは、この気の毒な狸を見るがよい。
そんな男嫌いなアルテミスでしたが・・・
アルテミスとオリオンの恋物語
ポセイドンの息子オリオンは巨人で美男子。普段は男になびかないアルテミスもオリオンにほれ込み夢中になってしまいます。
その様子を見てびっくりしたアルテミスの弟アポロンは、「な、なんだあいつ。男なんか大キライとか言っときながらメロメロじゃんか」と彼女をののしりましたが、いくら言っても効き目はありません。
たまたま、海のかなたに黒い点のようにオリオンの頭が見えているのをアポロンが見つけ、姉のアルテミスにこの標的をねらって、弓を射ようともちかけました。
アルテミスは弓矢の名手で狩猟の女神でもあったのです。
アルテミスはよもや頭とは思わなかったので、オリオンの頭を射てしまいます。
恋人を殺してしまったアルテミスは嘆き悲しみ、オリオンを空に昇らせ星座に加えました。
それがオリオン座なんですね。
ただし、
ギリシャ神話にはいろんなエピソードがあり、さそりがオリオンを刺し、のちに、オリオンと一緒に天にのぼり星座になったという物語もあるんです。
なんでいろんなエピソードがあるの
それは、明日のブログで紹介します。