ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

心の中にいる悪魔と演劇

人間はふだん「悪い心」を自分の心の奥底に封じ込めている。

その自分の中にある「魔」に気づき、解放するのが演劇であり、役に近づく第一歩である。

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これは、わたしがまだ若いころ、先輩の声優から教えられた言葉です。

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この小説を読んでいて、それを思い出しました。

人間のなか 川端康成

「あたし、心もからだも、よごれているのよ。」

志村は手をゆるめてためらったが、「よごれているって言えば、人間はみんなよごれている。だけど、そんなの、うそだ。人間はだれもよごれていやしない。どんなことしたって、よごれやしない、人間は・・・。」

「人間のなかには、いろいろなものがいるわ。いっぱいいるのよ。」

「人間のなかにって、桃代さんのなかに・・・?」

「そう。あたしのなかに・・・。こわいわ。」

「桃代さんのなかには、桃代さんがいるだけだろう。」

「そうじゃないの。桃代のなかに、桃代はいないの。」

「これはだれなの。」と志村は腕で桃代を抱きゆさぶった。

「桃代だわ。」

「このなかになにがいるのか、僕は見たいね。見せてほしいね。」

「志村さんの目には見えないわ。見えないから、いいのよ。」と桃代は少し落ちついて、目ぶたを閉じた。

志村は桃代をむきだして、「こんなきれいなからだが、どうして、よごれていると思うんだろう。」

「志村さんには見えないのよ。」

「見えているよ。」

「見ないでちょうだい。あたしのなかにいる、なにが出て来るかわからないから・・・。

「いいよ、なにが出ても・・・。なかにいるやつを、みんな追い出そうよ。鬼でも魔でも、みみずでも、とかげでもね。」

桃代は志村の顔の下で首を振った。「だめよ。海だっているし、雪だっているのよ。お化けがあたしを出たりはいったりしているの。

川端康成 初恋小説集 新潮文庫より

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