ヒロシマと川端康成
天授の子 川端康成
広島で私は強いショックを受けた。
人類の惨禍が私を鼓舞したのだ。二十万人の死が私の生の思いを新にしたのだ。
広島の原子爆弾からは四年過ぎて私は言わば戦跡を見ているに過ぎないし、私は根が悲劇も喜劇も知らぬ人間に過ぎないけれども、最初の原子爆弾による広島の悲劇は、私に平和を希(ねが)う心をかためた。
私は太平洋戦争の日本に最も消極的に協力し、また最も消極的に抵抗したという風で、今後の戦争と平和とについてもまたおそらくはそんな風なことになるのかもしれないが、私は広島で平和のために生きようと新に思ったのであった。
大好きな川端康成が、ますます大好きに なっちゃいました。
引用
天授の子 新潮文庫