ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

俺は戦犯になる。死刑になる。だが俺は生れかわってくる。

蝮のすえ 武田泰淳

 俺は日本精神の演説をした。君が言うとおり、聴き飽きるほどした。

人々はそれを信じて死んだ。

俺の若い兄弟も死んだ。奴等はもう二度と生き返らん。

生き返りはせんさ。夢枕(ゆめまくら)にもたたん。

忘れられる。

はじめはだんだんと、しまいにはキレイサッパリ、忘れられるんだ。

そういう世の中を、君はどう思う。

俺は日本精神なんかなくても生きていられる。今日も生きてる。

なくても生きていられるくせに、日本精神なき者は売国奴だと演説した俺と、

そんな俺の演説をまに受けて喜んで信じてさ、死んでしまった奴等とそれからまた、Aのような奴、君のような奴、あの女のような奴、

そんな奴等でできあがっているこの日本という奴は、これは一体何なのだ。え、何だ、これは。

俺は死刑になる。それは天罰だ。天罰でなくてもいい、しかし罰だ。つまり世界の罰だ。そうしておいて、一向さしつかえない。

だが、俺を罰したところで、すまんよ。すみはせんよ。

俺はまた生れかわってくる。

たぶんは同じ日本人として生れかわってくるんだからな。

もしかしたら、この人種は、つまり俺たちは、絶滅された方がいいかもしれんよ。

どっちにしろ、このままただですまんよ。すむはずがない。これは苦笑で終る問題じゃない。皮肉で終る問題じゃないんだ。

な、君もふくまれているんだ。インテリーもふくまれているんだからな

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——俺はまた生れかわってくる。

たぶんは同じ日本人として生れかわってくる——

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いろいろ考えさせられる言葉ですね。「蝮(まむし)のすえ」は太平洋戦争が終わった2年後の昭和22年 (1947年) に連載が始まり、翌23年 (1948年) に思索社より刊行された小説です。それでは、また。 

引用
和文学全集第15巻 小学館

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www1.odn.ne.jp

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