花束がいっぱい💗
川端康成は本当にきれいな文章を書きます。
駿河の令嬢
この列車は御殿場駅で急に寂しくなります。急行列車でなしに、普通列車で長い旅をした人は知っているでしょう。
午前の七時か八時、午後の二時か三時になると列車は花束を一ぱいに積みこみます。
これらの汽車通学の女学生の群で、客車の中は何と明るくそして喧(やかま)しくなることでしょう。
その花やかな時間がまた何と短いことでしょう。
五十人の少女は十分後の次の駅でもう一人もいなくなってしまいます。
その頃(ころ)私は伊豆の山に住んでいました。
伊豆からは三島駅で東海道線に乗換えるのですが、私の汽車はいつもちょうどこの花の時間でした。
乗っているのは沼津の女学校の生徒と三島の女学校の生徒です。
女学生たちは「花束」
女学生たちの通学時間は「花の時間」
すっごくよくわかりますぅ。女学生ってなんか花やかですよね。
もう一丁
イタリアの歌 川端康成
夏盛りとなると、病院は急に子供の入院患者が殖えた。慢性の疾患を暑中休暇中に治しておこうというのだ。
扁桃腺摘出手術が最も多い。しかも不思議なことに、たいていは女の子だ。
この病弱な花々は、なにか病院に鋭い明るさを彩った。