勇気が湧(わ)く名場面!
戦争なのよ、エディタ (ディタの正式な名)。戦争なの
「SSに見つかれば処刑される」
そう言いながら親指を立て、人差し指を水平に伸ばしてピストルを作り、ディタの額に向けた。
彼女は動揺なんかしていないと伝えたかったが、思いもかけない重責を前に緊張してきた。
「まかせてください」
「とても危険なことだ」
「どうってことありません」
「殺されるかも知れないよ」
「かまいません」
ディタはきっぱりとそう言いたかったが、足の震えが止まらず、体全体も震えてきた。
ヒルシュは、ウールのハイソックスに包まれた彼女の細い脚ががたがたと震えるのをじっと見ていた。
ディタは足の震えが止まらないので赤くなった。
止めようと思えば思うほどますます体はいうことをきかない。
さらに、手までも。
ナチスのことを考えたせいもあったが、自分が怖がっているとヒルシュに思われ、使ってもらえないのではないかと心配になったからだ。
「やっぱり、私じゃだめですね」
「君はとても勇敢だと思うよ」
「でも震えてます!」悲痛な叫びをあげた。
そのとき、ヒルシュは、いかにも彼らしい悠然とした微笑みを浮かべた。
「それは、君が勇敢だからだ。
勇気がある人間と恐れを知らない人間は違う。
恐れを知らない人間は軽率だ。結果を考えず危険に飛び込む。
危険を自覚しない人間は周りを危ない目に遭わせる可能性がある。そういう人間は僕のチームにはいらない。
僕が必要とするのは、震えても一歩も引かない人間だ。
何を危険にさらしているか自覚しながら、それでも前に進む人間だ」
それを聞いてディタは脚の震えがおさまっていくのを感じた。
「勇気がある人間というのは、恐怖を克服できる人間だ。君はその一人だ。名前は?」
「エディタ・アドレロヴァです」
カッコ良すぎて涙が出てきますぅぅぅ