念力と科学
念力を科学的に調べる場合、超能力をもつと主張する人に科学者がだまされやすいという問題がある。
科学者は、実験室で目にしたものを信じるように教え込まれている。
じっさい1982年、超心理学者たちが、特異な才能をもつと考えられたふたりの少年を調べるよう依頼されたときの話がある。
ふたりはマイケル・エドワーズとスティーヴ・ショーで、金属を曲げたり、思い浮かべた像を写真に焼き付けたり、念力で物を動かしたり、人の心を読んだりできると主張していた。
超心理学者のマイケル・サルボーンは大変な衝撃を受け、ミズーリ州セントルイスにあるマクドネル超能力研究所の超心理学者たちは、ふたりの能力に圧倒され、超能力がある紛(まぎ)れもない証拠を得たと考えて、論文を書き出した。
ところが翌年にふたりは、全部インチキだとばらし、自分たちの「力」は超自然的なものではなく、ただの手品だと種明かしした。
のちに、少年のひとりスティーヴ・ショーは奇術師として有名になり、よく全国ネットのテレビに出て、何日も「生き埋め」にされる芸を披露している。
新聞のテレビ欄を見ただけで、推理ドラマの犯人が誰なのかわかってしまう超能力をもっています。
念力にまつわる問題は、エネルギーの供給だ。
人間の体では五分の一馬力程度の力しか出せないのに、『スター・ウォーズ』のヨーダが念力で宇宙船を浮かせたり、『X-メン』のサイクロプスが目から破壊光線を放ったりするのは、エネルギー保存則に反する。
ヨーダのような小さな体に、宇宙船を持ち上げるほどのエネルギーをたくわえることはできないからだ。
どれほどがんばっても、われわれには、念力とされるような芸当や奇跡をなし遂げるだけのエネルギーはたくわえられない。
念力が物理法則に合致することなどあろうはずもない。
だけど、スター・ウォーズは大好きです。超能力も大好きだし、SFはメッチャ好きです。
引用
サイエンス・インポッシブル NHK出版