人生の真実は1つではない。
正しいと思います。
しかし世の中に、真実は一つではありません。
車いすの天才科学者・スティーヴン・ホーキングは、自分の不治の病を知ってから、毎日を大切に生きだしたのです。
ブラックホールやタイムマシンにかんする難解な数式にだれより造詣が深い人物といえば、宇宙論者のスティーヴン・ホーキングではなかろうか。
相対性理論を学ぶ学生の多くは、早いうちから数理物理学に秀でるものだが、ホーキングは初めこれといって目立つ学生ではなかった。きわめて聡明であるのは間違いなかったが、往々にして教官たちの目には、勉強に集中せず、能力を充分に出し切っていないように映った。
ところが1962年に転機が訪れる。オックスフォードを卒業して、ALS (筋萎縮性側索硬化症、あるいはルー・ゲーリッグ病とも) の症状に気づきはじめたのだ。
ホーキングは、自分が運動神経を冒す不治の病に襲われ、やがてはあらゆる運動機能を失い死に至ると知って、ショックを受けた。
当初はそれで愕然とし、どうせじきに死んでしまうのに博士号を取って何になるだろう、と思った。
しかし最初のショックを乗り越えると、ホーキングは人生で初めて物事に集中するようになり、先が長くはないことを覚悟して、一般相対性理論のなかでも有数の難しい問題に猛然と取り組みだしたのだ。
わたしは末期ガン患者です。ホーキング博士の気持ちは分かるつもりです。
引用
サイエンス・インポッシブル NHK出版