ジャンヌ・ダルク 神の声
ある日の正午頃、ジャンヌは自分の家の庭にいた。
突然教会の方から一つの声が聞えた。
「おこないを正しく保ちなさい、ジャンヌよ。私が手伝ってあげる」
声と共に光が見えた。この光は、声の来る方角から射して来ていた。
ジャンヌはおそろしさを感じた。とてもおそろしかった。
声はいつも同じ声音でしかも威厳を備えていたので、ジャンヌはしだいに神の声と考えるようになり、さらに、天使の声であることがわかってきた。
彼女が耳を傾け始めると、声はもっと多くのことを語りかけるようになった——
「フランスへ行きなさい、ジャンヌよ。お前はオルレアン市を救うのだ」「どうして私にそんなことができるでしょうか?私は無知な農民の娘で、武器も扱えませんし、馬にも乗れませんのに」とジャンヌは答えた。
声は再び命令した——「お前には出来るのだ。いずれ出発の時が来る。それまではおこないを正しく保ち、絶えず教会へ行くようにしていなさい」。
問答は三年間続いた。
1428年、16歳になったジャンヌは、ついに≪声≫に従うことを決心した。
ジャンヌはヒステリックな神がかりではなかった。
美貌で人をとりこにしたわけでもない。
平凡な田舎娘の明るさ、命令を下すだけでなく自分でも行動する——司令官ではなく戦友、貴族ではなく庶民の、人柄のよさが兵士たちの心をひきつけたのだ。
そしてそういう少女のひたむきな信念と希望。
——それがジャンヌの身を守り、ジャンヌと力を合わせようという意思を誰にでもおこさせたのだ。
引用
ジャンヌ・ダルク、誰?―聖少女の幻影を追って フィルムアート社
ジャンヌには神の声は聞こえていたと思います。
実際には、幻聴や幻覚、夢や現(うつつ)だったのかもしれませんが、聞こえていたのは事実だと思いますよ。
しかしジャンヌが真の国王を一回で探し当てた「奇跡」は、幻聴や幻覚、夢や現(うつつ)以外の何かがあったとしか思えません。*1
奇跡の少女、ジャンヌ・ダルク。すごいです。