演技論の違い
「王子と踊り子」で、ローレンス・オリヴィエとマリリン・モンローは共演しました。
ローレンス・オリヴィエは二十世紀のイギリス最大の俳優である。シェイクスピアの専門家で、映画にも数多く出演して多くの名作を遺している。
オリヴィエは、マリリンが傾倒するスタニスラフスキー・システムの、役柄の内面を摑み、その人物の感情と自分のそれとを合致させていく演技法を認めていなかった。
オリヴィエは、内面というものはあくまで外部のさまざまな細部の動きの集積によって表現されるべきだと考えていた。
それが伝統的なイギリス演劇の基本だった。
彼にとって演技はあくまで個人の技術なのだ。オリヴィエに言わせれば、役者同士で議論したり、経験を思い起こしたりする暇があったら、何度も稽古をしたほうがいい。
練習することで俳優は技術を会得していくというのが、彼の演技観だった。
美内すずえの「ガラスの仮面」を例にすれば分かりやすいかもしれない。北島マヤはスタニスラフスキー的で、姫川亜弓がオリヴィエ的なのだ。
引用
大女優物語 新潮社
わたしは「いいとこ取り」をモットーとしていますので、役者同士で議論したり、トラウマ以外の経験を思い起こしながら、何度も稽古を積み重ねよう、という考えです。北島マヤも姫川亜弓も、どっちも好きです。