オオカミは悪くなかった。
人間の味方だった。
それなのに彼の恋人は、人間に殺されてしまった。
彼女は、なにも悪いことはしていなかった。
殺されたのは、ただ、オオカミだという理由だけだった。
オオカミは復讐を誓った。
あいつにも俺と同じ気持ちを味合わせてやる。
あいつの一番大切な娘、赤ずきんの命を奪うことで・・・。
「赤頭巾ちゃんの生と死」(1800年)
◇ ◇ ◇
いまから200年ほど前に書かれた作品です。
この作品では、オオカミは悪いどころか元々は、赤ずきんちゃんの父親の農場で飼われていた優秀な番犬ということになっています。
しかしある日、心から忠誠を誓っていた主人に裏切られ、恋人を殺されてしまうんです。
オオカミは “被害者” という設定になっているんですね。
では赤ずきんちゃんは?というと、信心深くて明るく素直な、とてもいい子として描かれています。
ペローやグリム童話より、ずっと可愛いくて魅力的な少女になっています。
つまり、どちらも悪くないんです。
◇ ◇ ◇
「正義と悪の対立」ではない!
オオカミを正しいとするなら、赤ずきんは悪い子だった、と立場を逆転させるケースもありますが、この作品は両者とも非がありません。
どちらも正しいのに対立する構図は、『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』など、近年増えてきているように思います。
しかし今から200年も前に、「正しい者同士が争う」 物語が作られていたことに驚きと、逆に新鮮な感じすら覚えます。
本日は、この 「赤頭巾ちゃんの生と死」 のレッスンを行いました。
楽しいレッスンが出来たと思います。
それでは、また。
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いい人なのに悲劇に遭ってしまうストーリーは、「ロミオとジュリエット」を彷彿とさせますね。
演劇って奥が深いね。
【参考文献】
「赤頭巾ちゃんの生と死」
赤頭巾ちゃんは森を抜けて―社会文化学からみた再話の変遷 阿吽社
「小さい赤ずきんの生と死」
もうひとりのグリム グリム兄弟以前のドイツ・メルヘン 北星堂書店
オオカミがいい人で赤ずきんが悪人という作品には、「独裁者が語る赤頭巾ちゃん」(1940年)がありますね。
赤ずきんちゃんは、世間を欺(あざむ)いている凶暴で残忍な女の子という設定です。
オオカミは素手で闘いますが、赤ずきんちゃんは麻酔剤とガスと磁気爆弾という、当時の最新鋭の武器を総動員してオオカミに立ち向かいます。
この物語は、真実なのか、それともタイトル通り、独裁者が語っているフェイク(ウソ)なのか、という2つの読み解き方が出来ますが・・・
どちらにしても大爆笑です、おススメします。⇒「独裁者が語る赤頭巾ちゃん」(全文掲載)