幻想文学
背筋がゾクッとする怪談は夏の楽しみの一つだ。 ところが、明治期の寄席では廃れたという。幽霊は前近代的、非科学的だというのだろう。 「開化先生方はお嫌ひなさる事でございます」。 三遊亭円朝が創作した怪談噺(ばなし)「真景累ケ淵(しんけいかさねが…
大正文学の特色のひとつは、明治期の自然主義文学 (リアリズム小説) と違って幻想文学、今日でいうオカルト・ファンタジー小説への関心が高まったことがあります。 そして川端康成も幻想文学や恋愛怪談を書いているんですね。 それは、このような時代背景が…
妙な話 芥川龍之介 千枝子の夫は第一次世界大戦中、地中海方面へ派遣された将校でした。 千枝子は結婚後まだ半年もしないうちに夫と別れてしまい、一週間に一度は必ず来ていた夫の手紙もぱったり来なくなってしまったのです。 ちょうどその時分のこと、千枝…
少女向けに書かれた川端康成の、心温まる作品を紹介します。 薔薇の幽霊 (昭和二年発表) 山あいの村に一軒だけある借家「薔薇(バラ)の家」には幽霊が出るんです。 でも悪い幽霊ではありません。 心優しい幽霊さんは、薔薇の家に住んでくれた人が気持ちよく暮…
ある朝、グレゴール・ザムザがなにか胸騒ぎのする夢からさめると、ベッドのなかの自分が一匹のばかでかい毒虫に変ってしまっているのに気がついた。 ~「変身」岩波文庫より~ カフカの「変身」では、主人公がなぜ毒虫になったのかは、まったくの「謎」です…