ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

ブレヒト演劇

ブレヒトという人

かれはなにも知らないということを知っていて、他の人びとから学ぶ用意と努力とを怠らなかった。 かれが目指したのは、刺激することであり、他人と対決することであり、他人が考えるのを助けることであった。 このソクラテス的な特性は、かれの作品全体に浸…

後悔先に立たず

ブレヒトと書きかえ かれは作品を倦(う)むことなく書きかえる。 *1 二十回、三十回と書きかえ、ちょっとした地方公演のために全面的に手を入れたりする。 作品ができあがっているということなど、かれにとっては全然無意味なのだ。 引用ブレヒトの思い出 法…

ブレヒトの詩

あなたがたはこの世を去るとき自分たちが善良であったか ばかりを気遣うな善良な世界を去るように心掛けよ ほんものの進歩 とは目下進歩的状態 ではなく目下進歩中 のことほんものの進歩 とは目下進歩中 を可能にさせるあるいは 余儀なくさせるもの 引用ブレ…

いまこそ「セチュアンの善人」がいい

セチュアンの善人とは この物語「セチュアンの善人」の主人公、シェン・テは、善人として生きることを神様に誓います。 しかし、いいことをしようとすればするほど、シェン・テは不幸のどん底に落ちて行ってしまうのです。 そこでシェン・テは、逆に悪いこと…

コロナ禍で存在感を増すブレヒトさんの名言

肝っ玉おっ母とその子供たち あれは無能な司令官に違いないわ。 上に立つものが能なしで配慮が足りないから、兵隊【国民】は死なないように、蛇のように賢くならなきゃならない。 特別な忠義【忖度そんたく】が入り用になる。 いい国には何の美徳もいりはし…

「チ。」と「ガリレイの生涯」

「チ。ー地球の運動についてー」は、天動説が主流となっている15世紀のヨーロッパを舞台にした漫画です。 ラジオを聴いていたら、この本が紹介されていたので読んでみようと〝図書館検索〟をしたところ・・・ どこの図書館にもない国会図書館にしかないだけ…

東京五輪と井伊直弼と役作りのヒント

鎖国をやめて開国する 答えは一つしかないと分かっているのに、汚名を着るのを恐れて誰も決断を下そうとしない。 結局泥をかぶる決意をしたのは、大老井伊直弼(いい なおすけ)ただひとりでした。 幕末の大老、井伊直弼 彼について、悪人というイメージを持…

マハゴニーとコロナ禍の現在

「マハゴニー市の興亡」【ブレヒト作】と、コロナ禍の現在の状況がなんとなく似ているような気がするんです。 物語の中盤、お金さえあればなんでも夢がかなう町、マハゴニーに巨大な台風が近づいてきて、人びとは恐れおののきます。 台風を「コロナ」に置き…

台本の読み解きは、どうやるの?

本音を見抜け! ナチスドイツ・ヒトラーの魔の手から逃れた劇作家ブレヒトが最終的な亡命先に選んだのは、ブレヒトの大きらいなアメリカでした。 ブレヒトは、ヒトラーが政権を獲得し、突撃隊が公然と暴力を使いだした「国会放火事件」の翌日、1933年2…

若い才能を育てるには

ブレヒト大好き イタリアの独文学者たちが、どうすれば自国<イタリア>の若い演劇的才能を育成できるかに頭を痛めていました。 「演劇学校をつくろう」 「いや演技の稽古場をふやすべきだ」 「大学で演劇講座を開いたらどうだろう」 「演劇の相談所があると…

人間の成長とは

ブレヒトさんの生きかた ぼくらの経験はたいてい、じつに早ばやと判断に転化してしまう。 ぼくらはこの判断のほうを憶えこみ、しかもこの判断を経験と思い違えている。とはいえ、判断は経験ほどに信用のおけるものではない。 経験を新鮮なままに保持して、そ…

ズルいけど誠実。

ブレヒト大好き 劇作家のブレヒトはズルい人でした。だけど弱い人の味方でした。 ブレヒトは、ずるく、うまく立ち回って、強いものから巻き上げたものを、弱い立場の人びとにわけあたえたのです。 こんな逸話が残っています。 ブレヒトが二十歳をすぎたばか…

虚構と現実ガリレオ考

現実のガリレオと戯曲ガリレイの生涯 ガリレオの伝記を読んだところ、ブレヒト戯曲「ガリレイの生涯」とは異なる記述が見つかりました。 ガリレオの愛娘ヴィルジニアはガリレオ裁判の翌年1634年4月2日に、病気(赤痢)で亡くなっていたのです。 よって宗教裁…

コーカサスの白墨の輪

いじめられているクラスメートを助けたら、自分もいじめられてしまうかも・・・。 グルシェの場合は、もっとひどい。へたすりゃ自分も殺されてしまう危険もあるんです。 他には… 生みの親と育ての親。 生みの親が必ずしもいい人とは限りません。育ての親の方…

間違いとニュートンとアインシュタイン

間違うからこそ、正解が見つかる 宇宙的な視点で、この問題を考えてみましょう。 ニュートンの法則は地球上では正しい ニュートンの万有引力の法則 落ちるものがリンゴであれ、スポンジであれ、空気による摩擦抵抗を考慮しなければ、ニュートンの時代の地球…

複雑怪奇な人間心理

ガリレイの生涯【ブレヒト作】では、「ガリレオは正しい。聖書は間違っている」ことに気がつきながら、 「キリスト教を信じる人がいなくなったら聖職者である自分たちは明日から困る」と、ガリレオに地動説を撤回させたキリスト教会の姿が描かれています。 …

ブレヒトが好き

なぜっていいことが好きだから ブレヒト演劇の登場人物は「みんなの役に立ちたい」と いいことをします。 ところがいいことをすればするほど不幸になってしまうのがブレヒト演劇の特徴です。 「セチュアンの善人」シェン・テは神様に見捨てられ、「屠殺場の…

夕凪の街 桜の国

原爆投下を正当化する議論で「戦争終結を早め、数え切れぬアメリカ兵の命を救った」というものがあります。 また「真珠湾を攻撃し戦争を始めたのは日本だ」ともいわれます。 ただ間違えてはならないのは「夕凪の街 桜の国」の登場人物たちは巻き込まれただけ…

コーカサスの白墨の輪

「子供の手を2人の母親に引っ張らせて、どっちが本当の母親か?」で知られる大岡裁きが「コーカサスの白墨の輪」に出てきます。 大岡裁き*1では、手を引っ張られて泣く子どもの姿に耐えられなくなった母親が手を放し、生みの親が勝利します。 しかしブレヒ…

ブレヒト俳優の練習台本全文掲載!

シェイクスピア作「ロミオとジュリエット」 ロミオはジュリエットと知り合う前に、ロザラインという娘に恋をしていました。 ブレヒトの「ロミオとジュリエット」では、ロザラインと別れるために手切れ金が必要になったロミオが、使用人を追い出して、その土…

ブレヒト作「ロミオとジュリエット」

ブレヒトは、ドイツが生んだ偉大な劇作家です。 俳優のための練習用台本[第三夜より] 「ロミオとジュリエット」ブレヒト作 ジュリエットとその侍女 ジュリエット じゃお前、トゥリオを愛しているのね。もしその人の生命があぶなくなったら・・・ 侍女 ああ、…

ブレヒトとスタニスラフスキー

メソッド演技批判 私の大好きなブレヒト(1898-1956)は、スタニスラフスキー(1863-1938)の演技術を検討して、「抹香臭い(まっこうくさい)権威」と呼んでいます。 抹香臭いを調べると「かび臭い、説教じみて、まじめくさった感じ」とあります。 ブレヒトは、有…

アフレコでは・・・

大切なのは「いい作品を作ること」 そのために声優は何をするべきか 興味深いエピソードをご紹介します。 アニメと原作・イメージの違い 劇場アニメ「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」(1996年)を原作者のモンキーパンチ先生が監督して、「敵を後ろから刺す」とい…

もしも、サメが人間だったら

もしもね、サメが人間だったら 小さな魚たちにもっと親切にするのかな もちろんだよ。 もしもね、サメが人間だったら、海のなかにさ、小さな魚たちのために大きな箱を作らせるだろうね。 箱のなかには、もちろん学校もある。 その学校で小魚たちが教わるのは…

ブレヒトの恋愛詩

アニメや映画、舞台などの演劇に、恋愛要素はつきものですね。 「彼のところからの帰り道」 あのあと、あなたのところから帰るとき そう、あのすばらしい日 ぼうっとなっていた。だんだん目が見えるようになると まわりには、明るい顔の陽気な人ばかり あの…

歩く演技

演技における「歩く」という行為は、単なる移動の手段ではありません。 檻房の中をぐるぐるまわりながら、メッキース役の俳優は、彼がこれまで観客の前でやって見せたあらゆる歩き方を繰り返すこともできよう。 誘惑者の図々しい歩き方、 追い詰められた人間…

三文オペラ

海賊の花嫁ジェニー【三文オペラ劇中歌】 1.ご覧の通り あたしは しがないホテル酒場の皿洗い 客がチップをくれれば、頭を下げる でも、お客は 汚い私が どこの誰か知らない どこの誰か知らない ある晩 波止場で叫ぶ声 みんなあわてて騒ぎ出す でも 私だけ…

肝っ玉おっ母。Part 2

戦争は始めるのは簡単。だけど… 戦争も初めは馴染めないものかもしれないわね。 いいことっていうのは何でもそういうものかも。 だけど一度花を咲かせれば、あとは満開。 平和と聞いただけで、ギョッとするようになるよ。 ギャンブルと同じね。やめたら負け…

ガリレオと望遠鏡

ガリレオは、外国で発売されていた望遠鏡という発明品を知って 「軍事に使えますよ、敵が早く発見できますよ」といって実際の値段より、はるか高値で国に売りつけたの。 なんでそんなことができたのかというと この時点では国のお偉いさんたちは望遠鏡のこと…

肝っ玉おっ母とその子供たち

肝っ玉おっ母とその子供たち 【ブレヒト作】 (アンナは聞き耳を立てていたが、だんだん腹立たしそうに) あれは無能な司令官に違いないわ。 なぜだい? 勇敢な兵隊が入り用だって言ったからよ。作戦計画のちゃんとした司令官なら、なんで勇敢な兵隊なんぞがい…