ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

川端康成

新文章読本2

新文章読本 川端康成 本来国語は頗(すこぶ)る語彙(ごい)に乏しく、それを補って今日の国語を作りあげた外国語の恩恵に対して、私は深く首を垂れる。 が、国語の語彙の乏しさは、また一面、無口、謙譲の国民性の反映である。 雄弁は日本においては、古来諸外…

新文章読本

私一人のせまい文章の信念を、読者に強制することも避けたい。 川端康成は「新文章読本」の冒頭にこのように記しています。 「文章とは、こうだ!」みたいに押し付けてないところが好感を持てます。 ——川端康成いいですね。—— 新文章読本 川端康成 小説の文…

梨木 香歩「裏庭」

世の中いろいろあるけれど、だからこそ、のん気で平和でお気楽に生きたいなぁ… というブログです。 病院にはラジオを持って行かなかったので、入院中は本ばかり読んでました。 日本の文学 井伏鱒二 裏庭 梨木香歩 この3冊、全部読破 みんなおもしろい本でし…

三島由紀夫と川端康成

金閣寺 三島由紀夫 幼時から父は、私によく、金閣のことを語った。 私の生れたのは、舞鶴から東北の、日本海へ突き出たうらさびしい岬である。 五月の夕方など、学校からかえって、叔父の家の二階の勉強部屋から、むこうの小山を見る。若葉の山腹が西日を受…

花束がいっぱい💗

川端康成は本当にきれいな文章を書きます。 駿河の令嬢 この列車は御殿場駅で急に寂しくなります。急行列車でなしに、普通列車で長い旅をした人は知っているでしょう。 午前の七時か八時、午後の二時か三時になると列車は花束を一ぱいに積みこみます。 これ…

伊豆の「踊子との」その後。

「伊豆の踊子」は〝事実をもとにした小説〟です。この2人は、その後どうなったのでしょうか。

伊豆の踊子の内幕を川端康成が語る

一生温泉場から温泉場へ渡り歩いて暮したいと思っている。それはまたからだの強くない私に長命を保たせることになるかもしれないし。 1918年(大正七年)川端康成19歳 10月末、初めて伊豆に旅し、旅芸人の一行と道づれになる。この伊豆旅行の体験から、「湯ヶ…

怪談?幽霊と生まれ変わり

夏です、お盆です。川端康成の幽霊小説と水木しげるの生まれ変わりの漫画を紹介させていただきます。 慰霊歌 川端康成 花子が来ましたわ。 え?と私は部屋をひとわたり見廻して、また目を鈴子に戻しました。鈴子の声ではありませんでした。 私はここに来てい…

ヒロシマと川端康成

天授の子 川端康成 広島で私は強いショックを受けた。 人類の惨禍が私を鼓舞したのだ。二十万人の死が私の生の思いを新にしたのだ。 広島の原子爆弾からは四年過ぎて私は言わば戦跡を見ているに過ぎないし、私は根が悲劇も喜劇も知らぬ人間に過ぎないけれど…

エロティック川端康成

エッチな表現を、下品になる一歩手前で抑えるのが川端文学の特徴だといわれます。 舞姫 川端康成 やはり、ゆうべ、旅帰りの夫を迎えた、つかれであろうか。 このごろでは、波子は自分をおさえるのだが、矢木はそれを知らぬふりで、こころえていた。 波子は夫…

天敵襲来!絶滅を回避せよ

「わけあって絶滅しました。」を読んでみると、スティーブンイワサザイさんだけでなく、 天敵が登場すると、残念ながら生物は絶滅してしまうことが少なくないようです。 そんななか、「工夫」で生きのびた生物がいました。モリアオガエルさんです。 伊豆温泉…

木炭車と拳銃と歴史は繰り返す…

小説には当時の人びとの暮らしや風景がタイムカプセルのように封印されていたりします。 学校の教科書には書かれてない歴史ですね。 舞姫 川端康成 タクシイがいやな音を立ててとまると、うしろから煙をふき出した。 炭の俵とまきの袋とを、うしろにつけた車…

なんとなく不思議なこと

東海道 川端康成 一万年前というのも、百万年前というのも、大して変りがないようにしか、感じられない。 「人間は、いったい、どのくらいの年数を、実感として、心に持てるものだろうか。」 人の寿命が、その土台となるにちがいない。 また、人それぞれ、日…

川端康成と上手な文章のヒント

「可愛い」というワード(言葉)をつかわずに、読者に「可愛い」と感じさせる文章を書きましょう。 「上手な文章の書き方」みたいなコラムにそう書いてありましたが、川端康成の文章はまさにそれですね。 故園 川端康成 私が門口をあけるなり、えらい足音で駈(…

心に残った言葉たち 川端康成

大好きな川端康成の小説から、印象に残った言葉たちを紹介します。 母国語の祈祷(きとう) 川端康成 言葉とは何か。符牒(ふちょう)に過ぎない。 母国語とは何か。 「言葉の相違というものは、実は野蛮人の間で他の種族に対して自分達の種族の秘密を隠すために…

自分に潜む「なにか」に操られる感覚

目次 舞踊靴 川端康成 「人形つかい」との共通点 侵略SFの代表的名作 舞踊靴 川端康成 彼女は金色の舞踊靴を穿いて踊った。 そして、素足で穿く金色の舞踊靴に、彼女の足の脂汗(あぶらあせ)がしみこんだころであった。 舞台裏の階段を下りようとすると、子…

同情された?懲(こ)りない2人

SF小説と純文学 1984年 動物農場 2001年宇宙の旅 幼年期の終り アルジャーノンに花束を アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 侍女の物語 といったSF小説にくらべ、純文学は「本当のことが書いてあるんじゃないか…」と錯覚してしまう自分がいます…

心の内面を描写する川端文学

川端康成「親友」は、少女向けに書かれた小説です。 少女小説とは言っても、そこは川端康成。吾輩のようなおっさんにも楽しく読める傑作ですよ。 あらすじ めぐみとかすみは中学一年のクラスメイト。 赤の他人ながら、ふたごと見まごうばかりに瓜二つ。誕生…

「河童」を風刺と演劇的な視点で

これは或精神病院の患者、——第二十三號が誰にでもしゃべる話である。 河童 芥川龍之介 職工の解雇されるのも四五万匹を下らないそうです。 その癖(くせ)まだこの国では毎朝新聞を読んでいても、一度も罷業(ひぎょう)という字に出会いません。 僕はこれを妙に…

東京五輪と井伊直弼と役作りのヒント

鎖国をやめて開国する 答えは一つしかないと分かっているのに、汚名を着るのを恐れて誰も決断を下そうとしない。 結局泥をかぶる決意をしたのは、大老井伊直弼(いい なおすけ)ただひとりでした。 幕末の大老、井伊直弼 彼について、悪人というイメージを持…

奔放な女性たち川端文学

これってつまり女たちの浮気の描写です。 舞姫 川端康成 ぜいたくと言われた女学校を、波子は出ていて、名家や富家にとついだ、友だちが多かった。 そういう家庭は、敗戦による、転落がはなはだしく、また、所帯じみないで来たために、中年の女になりながら…

変態小説

これはやばい、さすがにやばい、いくらなんでもシャレにならん。これを読んでしまうと、以前のブログで〝変態小説〟だと論じた「指環」が可愛く思えてしまいますぅ。 士族 川端康成 「絵が好きならうちへいらっしゃい。絵の本をいくらでも見せてあげるよ。」…

美しい少女が天から降ってきた

口笛を吹きながら、ドイツの詩人キュウゲルンゲンが人通りのと絶(だ)えた夜更(よふけ)の街を歩いているところへ、ばさりと美しい少女が天から降ってきた。 なんとなく有名なアニメ映画を思い出してしまうこの小説は、川端康成「海の火祭」の一部「香の樹」の…

川端康成にも失敗作がある?

海の火祭 川端康成 川端康成全集第二十二巻の解説によると「海の火祭」は失敗作であると川端自身が認めているようです。 「海の火祭」は川端が28歳の時に発表した作品です。 生意気を承知で言わせてもらいますと 他の川端文学と比べてみると失敗作というよ…

変態は時代と共に・・・

・・・変態(へんたい)小説ですぅ。 指環(ゆびわ) 川端康成 貧しい法科大学生が翻訳(ほんやく)の仕事を持って山の温泉場へ行った。 都会から来た芸者が三人団扇(うちわ)を顔にあてて、林の中の小亭(しょうてい)で昼寝をしていた。 林のはずれの石段から彼は渓…

ゴジラと川端康成とプロメテの火

伊福部昭とは ゴジラマーチを作曲した音楽家です。 川端康成「舞姫」に伊福部昭の名前が出てきたんでビックリしました。 引用させていただきますね。 舞姫 川端康成 波子は二日つづけて、帝劇へ行くことになる。 今日は、江口隆哉、宮操子の公演の第一夜で、…

ストーカーのお話

前回のブログでちょっとだけ触れた「人間のなか」についての考察です。 人間のなか 川端康成 「人間のなか」はストーカーの話であり不倫の話です。 しかもストーカー行為を働くのは、女性である桃代です。 川端文学には、「みずうみ」(←完全なストーカー小説…

行動する女性と川端文学

「美しさと哀しみと」(板見けい子)「女であること」(さかえ)のように、川端文学には「行動する女性」が描かれています。 それは、美しくて、勝気で、強情で、喧嘩好きで、利口で、浮気で、移り気で、敏感で、鋭利で、活発で、自由で、新鮮な、「丙午(ひのえ…

川端康成とコカコラの車

舞姫 川端康成 波子は電車のなかでも、ぼんやりしていた。 「お母さま、コカコラの車・・・。」 品子に言われて、外を見ると、横腹の赤い箱車が走っていた。 「舞姫」より 新潮文庫 p.93 もしかして、これのこと なんかもう、ブレヒトの「マハゴニー市の興亡…

心の中にいる悪魔と演劇

人間はふだん「悪い心」を自分の心の奥底に封じ込めている。 その自分の中にある「魔」に気づき、解放するのが演劇であり、役に近づく第一歩である。 これは、わたしがまだ若いころ、先輩の声優から教えられた言葉です。 この小説を読んでいて、それを思い出…