呪い
「まじないの文化史」という本を読みました。呪いの本です。
平安時代から鎌倉時代にかけて、多くの説話や歴史物語が書かれた。
脚色も多く、そのまま事実とは受け止められないが、そこに描かれた呪いの描写は、当時の呪術の方法をうかがわせる。
道長の白い犬
「宇治拾遺物語」(うじしゅういものがたり) の御堂関白ノ御犬・清明等、奇特ノ事、によると、藤原道長(ふじわらのみちなが)が法成寺に参詣したおり、連れていた犬が門をくぐるのを止めようとしたという。
陰陽師安倍晴明を呼んで占わせると、法成寺の境内に呪物が埋められていることが判明する。
呪物を掘り出すと、清明は「これを作れるのは自分の他には道摩法師だけだ」という。
清明の術により呪物を作った者が道摩法師と判明する。
道摩の供述によると、依頼人は堀川左大臣藤原顕光(ふじわら の あきみつ)であるということであった。
この話は有名なので知ってました。そして「事実とは受け止められない」という記述を読んで、そりゃそうだ、と思いました。*1
しかし「呪い」は物語の世界のみならず、日常の世にもあふれています。
「呪」という漢字は、訓読みにすると「まじなう」とも「のろう」とも読める。
例えば、病などの災いから逃れるために「まじない」を行い、政敵などを打ち倒すためには「のろい」を用いた。
古代の日本では、呪いによる殺人を「厭魅」(えんみ)とあらわしてこれを禁じている。
「続日本紀」(しょくにほんぎ)には、「幻術を身につけ、厭魅呪詛によって物を傷つける者は、首謀者は斬首(ざんしゅ)、従犯は流罪」
つまり呪いは犯罪だったんです。首謀者は死刑、仲間は島流しの刑になったんですね。
「呪い」でイメージされるものに「丑の刻参り」(うしのこくまいり)など、男女の色恋沙汰による呪詛がありますが、これはなかなか記録には残りにくいそうです。
信頼できる資料に記録された呪詛事件は「権力争い」です。
呪詛のきっかけとしては、権力争いが多くを占めている。
とりわけ、強い権力をもった人物にはそのような事件はついて回るのである。
直接的に手にかける刃傷沙汰にくらべ、呪詛などは証拠や因果関係があいまいでも成立するのであって、冤罪をでっちあげやすいともいえる。
当事者が白状するか、第三者が訴えれば、容易に事件化することができるのである。
そういうことから、特に政争の手段として、呪詛を理由とする冤罪事件による政敵の追い落としが頻出している。
中世のヨーロッパでは魔女狩りの嵐がふきあれました。
みなさんご存知のように魔女なんて現実にはいません。つまり魔女とされた人たちは、ウソの告発で死刑にされてしまったんです。*2
そして日本では「呪い」でした。権力者たちは自分のライバルを蹴落とすためにウソをでっちあげて、死刑や島流しにしていたんです。
アニメや映画、ゲームなどでは魔術や妖術が大人気です。
そして私たちの身のまわり、神棚のおふだ、交通安全のステッカー、合格祈願のお守り、金運・健康運などの開運グッズ、さらには3月3日のひな祭りや七夕まで、元をたどればみんな同じなんです。
いろんなことにアンテナを張って演技力アップに役立てていきましょう。
参考文献
まじないの文化史 河出書房新社