チェーホフとスタニスラフスキイ
貫通行動とは
大学などで演劇を学んだ人ならご存知ですね。作品全体を貫くテーマに向かって、登場人物が行動<アクション>することです。
チェーホフの「三人姉妹」は、いかに衝撃的な作品だったのかについて書かれた文章をご紹介します。
この文章を読み解いてみましょう。
「三人姉妹」は、ただ1人の主人公を軸として展開される戯曲ではありません。「グランド・ホテル方式」と呼ばれる「群集劇」です。
主人公を1人に限定しない映画で思い浮かぶのは「シン・ゴジラ」がそうですね。
他にも
「大空港」
「史上最大の作戦」
「大脱走」
「マーズ・アタック!」
海外ドラマ【TVシリーズ】では
「HEROES」
「幼年期の終り」などがそうです。
1958年の暮れ、若いわたしには「三人姉妹」のテーマがよく見えてきませんでした。
1人の主人公の行動を追っていけば作品のテーマが見えてくる従来のドラマ作りと「三人姉妹」は違っていたからです。
わたしは総監督のケドロフ氏に質問しました。
すごい・・・。
「総監督に質問したい」と願っても【あえないのがふつう】です。この本の著者が日本の演劇界でかなり高い地位にいたことがうかがえますね。
「<貫通行動>テーマを背負っているものは誰でしょう。主人公の場合が多いですが、この劇ではだれがテーマを背負っているのですか?」
ケドロフ氏は「わたしたちは貫通行動の担い手という考え方はしません」
つまり貫通行動は、1人の人物に担わせるのではなく、作品全体を通して「透けて見えてくる」ものであると、ケドロフ氏は答えられたのです。
これはわたしの経験譚ですが、生徒たちに群集劇のドラマ「HEROES」や「バトルスター・ギャラクティカ」を見せると、みんな戸惑って「誰が主人公なんですか?」と質問してきました。
今から10年前でもそうだったんですから、60年くらい前の人々にはもっと衝撃的だったんでしょうね。
スタニスラフスキイは群集劇を初め全く理解できませんでしたが、チェーホフの戯曲との苦しい戦いのなかで彼自身の考えを発展させ変えていったについては、過去のブログで言及しております。よろしければ、ぜひ!
最後に、わたしの所有する「俳優修業」スタニスラフスキイ著から抜粋した<貫通行動>についての記述を紹介します。年代物です。