メークドラマ
本を読んでいて心に残った言葉たちを紹介させていただきます。
長嶋茂雄語録
1996年の逆転優勝も忘れられない。
7月6日時点で首位広島から11.5ゲーム差に離され絶望的だった。
それをひっくり返してのセ・リーグ史上最大の逆転劇だった。10月6日、ナゴヤ球場で中日を破り、リーグ優勝を決めてドラマは完結した。
私は「メークドラマだ、奇跡を起こそう」と言い続けた。「メークドラマ」は流行語となった。
人間というのは弱い面があるから何かピンチ、試練に追い込まれると不平不満、愚痴が突然出てきてしまう。
つまり否定哲学が先行して、肯定哲学が出てこない。人間に同居する一番の体質だ。
しかし、いったん肯定哲学が攻勢に転じるとおもしろい。つまり乗っている時というのは負けていても勝てるんだという気持ちになる。それが現実の勝利に結びつくということがままある。
勝負事は二つに一つ、フィフティーフィフティーの世界だ。だから選手にはいつも絶対的肯定論者であれ、ポジティブな気持ちで野球人生を送りなさいとうるさく言っている。
ネガティブに入ったらすべてが立ちはだかって壁にぶつかるものだ。イチローにしろ、将棋の羽生さんにしろ勝負師の人は、そういう肯定哲学をみんな持っている。
日本シリーズは仰木マジックにしてやられた。前年、阪神大震災で多くの犠牲者を出した神戸を本拠地とするオリックスがパ・リーグを連破しての勝利だった。
勝利者だけが得られるあの胴上げのシーンを、じっと目をそらしてはいけない、選手諸君には全部見ろと、見たその無念の思いを糧にして来年それを生かせと伝えた。
同時に勝者を讃えるという懐の深さを見せるのもエチケットだ、ということも。
参考文献