ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

玉手箱(魂出匣)と浦島伝説

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玉手箱を開けた浦島太郎は、なぜおじいさんになってしまったのf:id:seiyukenkyujo:20191122020501g:plain

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毎日新聞コラム「余録」の解釈がおもしろいです。


「玉手箱」を辞書で調べ、その語源の欄を見ると、「タマデバコ(魂出匣)の意か」という古い辞書の説を紹介していた▲

昔、魂を身の外に出して保存すると不死身になるとの信仰があった。「外魂(がいこん)」信仰というそうだ。

浦島太郎が玉手箱を開けて老人になったのも、自分の魂の入った箱を知らずに開けた話と解釈することができる。つまり魂出箱である▲

 

浦島太郎を深掘りする

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浦島伝説について、冨倉徳次郎 博士 (駒沢大学名誉教授) の解説を紹介させていただきます。

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『浦島太郎』は日本の代表的童話ですが、そのもとになった浦島伝説は、世界中に広く方々の民族にそれぞれの形で伝わっている神婚説話(しんこんせつわ)【神仙(しんせん)と人間とが結ばれた話】です。

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それは古く『丹後風土記(たんごふどき)』も雄略(ゆうりゃく)天皇のときのこととして記され、また古伝説では、丹後の国(京都府)の漁師 水江浦島子(みずのうえのうらしまこ)が大亀の導きで竜宮城に行き、竜宮城の姫君亀姫(かめひめ)と結ばれたという話になっています。

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それが室町時代の「お伽草子(おとぎぞうし)」にも書きとめられ、そこでは漁師は浦島太郎という名になり、亀姫も乙姫(おとひめ)という名になって、今日、童話として伝えられるような形にまで成長したわけです。

 

竜宮城とは

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竜宮というのは、青い海原の底にあるといわれる海神の宮殿です。これも世界中の海洋民族が古(いにしえ)夢見た一つの楽園です。

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日本では、兵庫県の明石の海や、この浦島伝説に出てくる丹後の海のような風光明媚(ふうこうめいび)な海の底にあるという話が有名です。

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その海神としては竜神が当てられています。彼は魚族の頭(かしら)で、その竜宮は不老不死の国とされています。

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この話には、乙姫が故郷に帰ろうとする浦島に玉手箱を渡すくだりがあり、その玉手箱をあけると白い煙が出て、美少年の浦島太郎が白髪の老人となってしまいます。

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この玉手箱には、実は浦島太郎の七百歳という年齢が封じ込められていた*1というのですが、ここに竜宮城を不老不死の国としている考え方が見えて、この話に神仙譚(しんせんたん)としての夢を与えています。

 

鶴亀とは

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古伝説では、乙姫の言葉にそむいて玉手箱をあけた浦島は、老衰(ろうすい)し、苦悶(くもん)して、その場で生命を終わることになっています。それがもとの形でしょう。

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しかし「お伽草子」では、浦島太郎は白髪の老翁(ろうおう)となり、さらに美しい鶴(つる)と化して蓬莱(ほうらい)の山に遊び、これも亀の姿にかえった乙姫とともに幾久(いくひさ)しく生き、ともにめでたく明神(みょうじん)として祭られるという結びになっています。

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だからこそ、おめでたいもののたとえに「鶴亀」と申すのですね。

参考文献

母と子の世界のカラー童話シリーズ うらしまたろう 研秀出版

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www1.odn.ne.jp

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*1:

童話の浦島太郎では「竜宮で暮(く)らした三年は地上での三百年」になっています