ギリシア神話は異説だらけ。なぜ?
昨日のブログの続きだよ。
ギリシャ神話にはいろんなエピソードがあります。昨日紹介したオリオンが星座になった物語とは違う異説を2つお話します。
1.オリオン。
この荒っぽい狩人は地上の動物をすべて根絶やしにしてしまいそうであった。
オリオンがクレタ島で狩りをしたとき、アルテミスやレトもいっしょであった。
そこで、大地はオリオンに対して、さそりを産んだ。
このサソリが狩人オリオンをさし、のちに、オリオンといっしょに天にのぼり星座になったという。
2.あるいは、オリオンがアルテミスの衣装をつかんだとき、アルテミスが暴行者オリオンにさそりを送ったという説もあります。
なぜ異説があるのか
ギリシャ神話には、全体をカバーする単一の原典はないからです。
ギリシア神話は、
オルペウス
ヘシオドス
ソポクレス
エウヘメロス
アポロニウス
アポロドウス
パウサニアス
ヒュギーヌス
などの叙事詩人や劇作家が、西暦でいえば紀元前8世紀から紀元前後という、何百年もの非常に長い年月にわたり創作した物語です。
日本神話は「古事記」と「日本書紀」を主な出典とすることから、記紀(きき)神話とも呼ばれます。現存する両書の最古の写本を定本・原典としてもおかしくありません。
またユダヤ神話は、ユダヤ教の「聖書」、キリスト教でいう「旧約聖書」を出典としています。*1
これに対してギリシャ神話には、全体をカバーしうる単一の原典はないんです。
ギリシャ神話は、口頭で伝承されてきた宗教神話と、演劇の台本として創作された物語からなり、演劇は悲劇とサテュロス劇(喜劇)からなります。*2
ほかにも断片しか伝わっていない様々な伝承や、後世付け加えられた物語が存在します。また有名な逸話の中にはローマ時代に編纂(へんさん)された「変身物語」によるものも多くあります。
決定版がないために辻褄(つじつま)が合わず、神々の関係にも相違が多数あるのが「ギリシア神話」なんですね。
いろんなことを知るのって楽しいね。それでは、また。
参考文献
ギリシア神話の神々 河出書房新社
ギリシアの神話——神々の時代 中公文庫
眠れなくなるほど面白いギリシャ神話 日本文芸社