善と悪と戦争
風媒花 武田泰淳
ところで問題は、某PD工場ですな。人殺しの武器の注文を大量に受けています。
職工さんたちだって、何も好きこのんで、戦争道具をこしらえているわけじゃない。悪意も悪魔性も、あったもんじゃありませんよ。
これまた親なり子なりを養うために、善意を以て一生懸命、検査にパスする品物をこしらえてるんです。腕のいい潔癖な職工ほど、性能のわるい品物を仕上げるのは嫌いますからね。
だから優秀な武器弾薬が、それこそ無限に、日本の工場で生産されつつある現状ですよ。
悪意だの悪魔性だの持ちあわせてる連中じゃありませんよ。少し抜けてるぐらい、善良素朴なアジア人ばっかりですよ。
全く世の中って、うっかりしているあいだに、敵だの味方だのに、なったりならなかったりしてしまうもんですからね。
悪い心をもっているから戦争の武器を作っているんじゃなく、善良で心やさしい人たちが、親や子どもを養うため、ただ毎日の生活のためだけに戦争の武器を作っている現実・・・。
世の中ってつくづく単純じゃないですぅ。