幻想文学と心霊ブーム
大正文学の特色のひとつは、明治期の自然主義文学 (リアリズム小説) と違って幻想文学、今日でいうオカルト・ファンタジー小説への関心が高まったことがあります。
それは、このような時代背景がありました。
心霊学が世界的に大流行
日本初のノーベル文学賞に輝いた川端康成は、生涯にわたり「心霊」と「性愛」というモチーフを憑(つ)かれたように追い求め、幽艶凄美(ゆうえんせいび)を極める恋愛怪談の数々に結晶化させた稀有(けう)なる作家であった。
川端と怪談とのかかわりを考えるうえで誰しもが指摘するのは、十九世紀後半から二十世紀初頭にかけて欧米で大流行をみた心霊学の影響であろう。
1948年、米国東部の田舎町ハイズヴィルを騒がせた怪異現象に端を発し、1870年代に入るとヨーロッパへも広がった降霊術への関心は、ウィリアム・クルックスやオリヴァー・ロッジをはじめとする著名な科学者や文化人を巻きこんで「心霊研究協会」結成(1882)へ発展する一方、ロシア出身の大霊媒ブラヴァツキー夫人らが興した「神智学協会」(1875)に代表されるオカルト復興運動の大きな原動力ともなっていった。
日本でも1910年代初頭、東大助教授だった福来友吉が、霊能者による透視や念写の実験に取り組み、騒然たる反響を巻き起こしたのを一契機としてこの分野への関心が高まり、1923年には、英文学者で大本教の関係者だった浅野和三郎らにより、日本初の「心霊科学研究会」が結成されている。
そ・こ・で。
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