ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。いろんなことを知って演技に役立てましょう。実技も知識もどっちも大切!ぜひ、どうぞ。💛

宇宙戦艦ヤマトと70年代

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「時代に反逆する気分」。
脚本家・藤川桂介は「宇宙戦艦ヤマト」にこめた想いをこう語る。


彼はもともとアニメ以前に「ウルトラマン」「ウルトラセブン」などの特撮物を手がけていた。


ウルトラセブン」の第16話「闇に光る目」では、岩石宇宙人アンノンがかれらの母星に地球が送り込んだ観測ロケットを侵略行為と判断して攻め込んでくる。これは誤解なのだが、地球人の視点の相対化でもある。


結局アンノンは戦いを経て説得を受け入れて、母星に帰っていく。正義が立場によって逆転しうるというウルトラシリーズにあって、このエピソードもまた花を添えている。


「ヤマト」以前の藤川のアニメの最大のヒット作は「マジンガーZ」である。


藤川が担当した第七話「あしゅら男爵の大謀略」では、敵役あしゅら男爵の巧妙な煽動ではあるが、街が戦闘で荒廃した元凶は光子力研究所にあると市民が誤解。糾弾にあった兜甲児はみずからの依って立つ正義について悩む。


彼が同じく担当した第17話「地底機械獣ホルゾンV3」では、ドクターヘルは大地震を起こし、光子力研究所が屈服すれば助けてやると脅す。市民はそれに乗り、政府に要求を呑むよう迫る。


こうしたエピソードは市民の「愚かさ」を描いているとも言えるが、正義がこのころ既に自明で単純なものではなかったことも示している。


当時良識ある大人からは俗悪の代名詞のように言われた「テレビまんが」だったが、ここには新しい表現を作りだそうという想いが込められていた。



軍艦マーチ事件。作品をめぐる解釈のズレ


さまざまなスタッフの思い、発想、努力が結集した「宇宙戦艦ヤマト」だが、作品世界の解釈をめぐるズレもあった。


「ヤマト」に対してリアリズムを主張した桝田利雄は架空戦記、戦争映画という意識がやや強かったようだ。リアルにこだわれば、戦闘を過酷に描かざるを得ない。西崎義展もややそれに近かった。


西崎と桝田に比べ、松本零士はファンタジー、宇宙の大航海物語の要素のほうが強かった。


第二次世界大戦の回想シーンでは、彼は旭日旗は使わないよう指示した。そもそも「ヤマト」は戦艦大和のような科別に分かれた組織割りではなく、班別である。また軍隊の階級もなく、敬礼も軍隊式ではなく腕を胸のところに掲げる独特のもの。そのいずれも、「ヤマト」から軍隊色をなるべく排したいという松本の配慮の表れだった。


石黒昇も松本の「右にも左にも偏しない作り方」という姿勢に共鳴したという。この松本の意図は結果的に作品世界にプラスとなり、多くの人から支持される理由のひとつになったように思う。


一方、藤川桂介は彼の物語観から、リアリズムでもなくファンタジーでもなくその中間を狙うようにしたという。


第二話「号砲一発‼宇宙戦艦ヤマト始動‼」では、第二次世界大戦時、戦艦大和が米軍の攻撃で撃沈された光景が回想シーンとして登場する。西崎は、大和と僚艦が進撃する場面に軍艦マーチをあてようとした。


松本は頑強に反対した。


一歩も引かない西崎を見て、松本は番組を降りることすら考えたという。しかし制作会議で、演出助手の石崎すすむがこう発言したという。


「質問があります。二話では軍艦マーチが入っているそうですが、どういう意図で使っているのですか?我々は右翼的な作品を作るのに手を貸したくありません。お答えによってはこの場で辞めさせてもらいます」


けっきょく軍艦マーチは使われないことになった。


放送ぎりぎりのタイミングでその場面のみ納品済みのプリントではなく、ダビングし直したテープを差し換えることとなった。しかし新潟地方は間に合わず、軍艦マーチはそのまま放送されたという。そしてフィルム自体は軍艦マーチのまま修正しなかったので、再放送ではそのまま流れている。ちなみに、「宇宙戦艦ヤマト 劇場版」では軍艦マーチは流れない。



ガミラスは「宇宙戦艦ヤマト」の中で大きな役割を担っている。


一般に「ヤマト」はサブカルチャーにおいて、敵にも正義があることを描いた最初の物語とされることがあるが、それは正確ではない。ウルトラマン」のジャミラ、「ウルトラセブン」のノンマルト、「海のトリトン」のポセイドン一族などの前例がすでにあるからだ。


「ヤマト」が特筆すべきなのは、先の作品と違って敵が対等に扱われ、ドラマがあり、なおかつ魅力的であったことだ。


UFOに乗った異形の宇宙人、侵略者というのがこのころの敵のよくある姿だった。これに比べ、ガミラスは肌の色こそ違え、同じ人間であり、かれらはひとつの社会を持っていた。この社会を登場させた結果、「ヤマト」が同時代の作品を大きく突き放すクオリティを具えた。


ガミラス星全体主義国家である。

一般市民も設定はされていたが、作品中には登場しない。ナチス・ドイツをモチーフにしていることは明らかだ。そして敵が大王や帝王ではなく、総統という近代的な政治制度をベースにした世界観には洗練があった。


ちなみに、「パート1」では、単にガミラスと呼ばれ、設定としてはガミラス大帝星という表現があった。ガミラス帝国という呼称が登場するのは続編「宇宙戦艦ヤマト2」の第10話においてである。


大帝星という表現が第三帝国のような通称であるなら、当初はガミラス共和国というようなイメージであったかもしれない。あるいは星を国と同義で表したのだろうか。


たしかに「パート1」のガミラス帝国のような専制主義というよりは、独裁共和国の方がふさわしい雰囲気を持っていた。続編では、デスラーは武人としての側面が強調されるが、このときは現代的な政治制度を背景とした独裁者としての色彩が濃かった。


「ヤマト」はクリエイターがそれぞれの思想、価値観、感覚を持って制作に臨み、それが作品に反映された。特にメインのスタッフの誰ひとりが欠けても、いま我々が知る形の「ヤマト」は生まれなかったし、あるいは支持されなかった可能性が高い。たとえば西崎義展が、松本零士が、宮川泰がもしいなかったらとは想像もできない。その意味で結果としての作品は、誰かひとりに限定される表現ではなく、集合意識が生み出したもののように思う。




この解説本で一番インパクトがあったのは「帝国のような専制主義というよりは、独裁共和国」の部分です。



「え、独裁共和国って、どんな国???」と、いろいろ調べてみました。



共和国をかんたんに説明すると、君主(王様)がいない国家のことです。



君主国(王制)は多くの場合、世襲です。「エリザベス1世、2世」などがそうです。ちなみに現在のイギリスは立憲君主制(制限君主制)で、王様の力はあまり強くありません。



独裁共和国とは、君主(王様)じゃない人物が独裁を行っている国家です。



つまりガミラスとは、もともと王様ではない、ドイツのヒトラーのような人物が国のトップに立ち独裁政治を行った国家ということになります。



ぼんやりとは理解してましたが、はっきりとはわかっていませんでした。大変勉強になりました。



知識欲が刺激される、とってもいい本です。お勧めします。



またこの本には、「波動砲は『パート1』では、人間(ガミラス人)に対して撃つことは原則的になかった」との記述もあります。



本書が出版されたのは2010年11月です。
あくまで推測ですが、この指摘が「宇宙戦艦ヤマト2199」(2012年劇場公開、TVアニメは2013年4月より)の「ヤマトは波動砲を自身や誰かを守るために用いており、スターシャの意見を変えさせる」設定のヒントになった可能性もありますね。



「物語を深読みして新たな作品づくりにいかすのは演技も同じだよ」そのような話をしながら、本日もレッスンを行いました。また来週もよろしくね。

参考文献
宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン 社会評論社


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【こぼれ話】

ちなみに私の所持しているCS放送を録画した「第二話」では、軍艦マーチは流れません。おそらく新たにプリントし直したのでしょう。いろんなバージョンがあるんでしょうね。