ベルタの長ゼリフを読み解く
昨日、YouTube動画で公開した、ベルタの長ゼリフですが、抽象的すぎて、きちんと読み解いて意味を理解しないと、どう演じていいかわかりません。
なので解説します。
わたしの心の中を知りたいですか?
ハンスなら私の気持ちを知っていると思っていました。
わたしが信じていたのは栄光でした。わたしの栄光ではなくて、好きなひと、ハンスが栄光につつまれることをです。
子どものころから決めていました。まだちいさかったころ、樫の樹に、ハンスの名前を刻んでおきました。樫の樹が大きくなるのといっしょに、わたしのハンスへの思い【恋心】も毎年大きくなっていきました。
わたし、女【妻】というのは、男のひとの食事を用意したり、寝たり、家の中の雑用をこなすだけの存在ではないと思ってきました。
ハンスが宮廷で出世するために、ハンスが栄光をつかむためにあらゆるチャンスを見つけ出しサポートする存在になろうと思ったんです。
ハンス【男】の前に立ちはだかる世界はいつも困難で、けわしいものであり続ける。
しかしわたしには、そんなハンスの困難をはねのけ、大きなチャンスを用意できる力がある。【注】ベルタが自信たっぷりなのは王族の一員だからです。
死ぬまでハンスの栄光のためにアシストできるパートナーでありつづける力が、わたしにはあると思っていた。
私の髪、黒いでしょう?
だからあの暗黒の森の中でも、ハンスはわたしの光のなかにいる。わたしはハンスを守ることができる。おたがいに距離は離れていても、ハンスにはきっとわたしが見える。暗闇の先に見える栄光へと、わたしとハンスは一緒に行動できると思っていました。
だけど実際に森の中ではわたしはハンスのそばにはいないし、ささやかなお守りくらいでしかない。
でも、わたしには不安はありませんでした。
ハンスは、必ず勝つ。勝利のひとになるとわかっていたからです。
なぜってハンスは、わたしが心を奪われた、世界で一番すてきな人だからです。
ハンスには黒髪の騎士、つまりわたしの王子さま、わたしと結婚してほしかった。
ところがある晩、ハンスは金髪のひとオンディーヌを森から連れてきて結婚してしまった。
そんなことになろうとは、夢にも思っていませんでした。
こりゃだまされるわ・・・。
でもベルタがハンスをこんなに思っているのなら、ベルタと結婚した方がハンスは幸せになれそうな気がするニャ。
このセリフがベルタの本心ならね。でもこれ全部ウソだよ。
ベルタが王族の一員であることは【この時点では】本当です。でもベルタはハンスを弄(もてあそ)んでいるだけなんですね。
世の中のすべてが信じられん。・・・ですね。
参考文献
オンディーヌ 光文社古典新訳文庫