ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

シンデレラ比較



グリム童話とペロー童話のシンデレラを比較して、演技の参考にしてみましょうか。


グリム童話のシンデレラ 決定版(第七版) には、魔法使い(仙女)や・カボチャの馬車・ガラスの靴といったアイテムは登場しません。

しかも、真夜中12時までというタイムリミットのエピソードもないんですね。

それらが出てくるのは、ペロー童話のシンデレラなのね。


ということは・・・みんなが知っているシンデレラのお話はペロー童話だということですか。

それが、そうとも限らないの。

ペロー童話では、シンデレラに意地悪をしていた2人のお姉さんは、貴族と結婚して幸せになっちゃうから。

意地悪してたのに?

ペロー童話のシンデレラは、とても心のやさしい娘という設定になっています。

2人のお姉さんは物語の最後にシンデレラにしてきた意地悪のすべてを詫びます。

心の優しいシンデレラはお姉さんを許し、宮廷の貴族と結婚させてあげるというラストになっているんですね。

そうか。
心が優しい娘だったからこそ、王子様もシンデレラに夢中になったという解釈も出来るわね。

グリム童話の姉妹は悲惨よ。
2人の姉妹はシンデレラがお城に残した金の靴 (ガラスではなく純金で出来た靴) を履こうとして

上の姉は足の指を、
妹は踵(かかと)を包丁で切り落としてムリヤリはいたから靴から血がどくどく出てきて

しかも最後は
姉妹とも鳩に目をつつかれて失明してしまうのよ。

残酷ですが、むしろこのエピソードのほうが日本では知られていますね。

子どもに聞かせるにはどうかと思うけど・・・、

これはこれで 「意地悪をすると罰が当たるよ」 という教訓になってるわね。

みんなが知ってるシンデレラは、ペローやグリムをミックスしたお話だった。

演技も同じように、いろんなものを比べて見て、いいところを取り入れていくことが大切だと思うよ。

参考文献
完訳ペロー童話集 「サンドリヨン または小さなガラスの靴」 【岩波文庫
完訳グリム童話 「灰かぶり」 【角川文庫】

ちなみに、10年くらい前に流行った 「本当は恐ろしいグリム童話」 は、原話ではありません。

あくまでも現代になって書かれた、『新しいグリム童話』 であって 「グリム童話初版の忠実な翻訳本」 ではないんですね。お間違えのないように。


著者の桐生操が 「はじめに」 で、「グリム童話の伝えたかったであろうものを大胆にデフォルメしてみた」と述べていますね。

ただ、「中世ヨーロッパでは飢饉が頻発していた」 など、社会情勢を詳しく調べていますし、当時を知るうえで参考になりますね。

参考文献
「本当は恐ろしいグリム童話」【KKベストセラーズ



その後、判明したこと・・・。


グリム童話は、初版と、その後の版に大きな差があります。

グリムは、童話集が版を重ねるたびに筆をくわえていったのです。



グリム兄弟は、一言一句、あまりにペローに似ているからという理由で、「長靴をはいた猫」 を除去し、「赤ずきん」 の結末には 「狼と七匹の子やぎ」 の結末を継ぎ足しています。

長靴をはいた猫」 は、グリム童話集の初版にのみ収録されています。ペローの影響が明らかなため、第二版以降は省かれました。


さて、「シンデレラ」です。


ペローの 「サンドリヨン(シンデレラ)」 では、最後の場面で、義理の姉たちはサンドリヨンの足元に身を投げ出し、それまでのひどい仕打ちを詫びます。

サンドリヨンは実に寛大で、「喜んで許しますとも。どうかいつまでも私を好きでいてください」という結末になっています。

グリムの 「灰かぶり(シンデレラ)」 の結末部分は、初版では、「継母と二人の高慢な姉さんは驚いて真っ青になりましたが、王子は灰かぶりを連れて行ってしまいました」という終わり方になっています。

ところが第二版以降では、灰かぶりの義理の姉たちは鳩に両目をえぐられます。

その他の、主な変更点は・・・。


グリム童話の初版には、これらが登場していました。

「六頭立ての馬車(ただしカボチャの馬車ではない)」⇒【ペロー童話では、カボチャの馬車】 

「シンデレラの召使いたち」 

「真夜中12時のタイムリミット」

しかし、決定版(第七版)では、これらはすべて省かれています。

グリム童話の決定版(第七版)では、シンデレラは徒歩でお城へ向かい、王子様と踊り、夕暮れになると家に帰るという描写になっています。

シンデレラに幸せをもたらしてくれるのも、ペロー童話では、仙女(魔法使い)。

グリム童話では仙女(魔法使い)は登場せず、木をゆするとドレスなどが降ってくるという描写になっています。

そのドレスが降ってくる木も、グリム童話初版では、お母さんのお墓に植えられた(ふつうの)木。

決定版(第七版)では、お母さんのお墓に植えられた 「はしばみ」 【注】(ヘーゼルナッツ) の木 に微妙に変化しています。

 

  • ハシバミの木【占い棒】
    昔「占い棒」と呼ばれる、水脈、鉱脈の発見に用いられた二股の枝棒があったのですが、その棒の素材がハシバミの木でした。ハシバミは魔よけのお守りや豊穣のおまじないなどにも使われたそうです

ガラスの靴


もっとも重要なアイテム、「ガラスの靴」 が出てくるのは、ペロー童話のみです。

グリム童話では、初版でも決定版でも、ガラスではなく 「金の靴」 でした。

参考文献
初版グリム童話集 【白水Uブックス
完訳グリム童話 【角川文庫】
グリム童話 メルヘンの深層 【講談社現代新書



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