ワークショップ 声優演技研究所 diary

「なんで演技のレッスンをしてるんですか?」 見学者からの質問です。 かわいい声を練習するのが声優のワークショップと思っていたのかな。実技も知識もどっちも大切!いろんなことを知って演技に役立てましょう。話のネタ・雑学にも。💛

ストーカーのお話

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前回のブログでちょっとだけ触れた「人間のなか」についての考察です。

人間のなか 川端康成

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「人間のなか」はストーカーの話であり不倫の話です。

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しかもストーカー行為を働くのは、女性である桃代です。

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川端文学には、「みずうみ」(←完全なストーカー小説)や「伊豆の踊子」「処女作の祟り」のように、現代の感覚ではストーカーだと思われても仕方ないよね、という作品群がありますが、

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「人間のなか」は、女性目線のストーカー行為を描いた男女の視点を逆転させたお話なんです。

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あらすじ

「志村さん、あたしを轢(ひ)き殺せばよかったのに・・・。」

「あぶなかったね、ほんとに・・・。あんなあぶないことをする人もいるなんてね。」と志村は桃代の髪をやさしくなでた。

「命がけだもの。」と桃代は言った。「轢き殺されるか、抱いてもらえるか、あたしはどちらでもよかったの。」

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——冬の夜霧の河岸道を走る志村の車の前に、女の姿が不意に浮き出た。あっと志村は目をつぶった。どうして車をとめ、どうして車を河の方へ避けたか、志村はわからなかった。

轢いた手ごたえはなかったが、女をはねたと思った。

志村は車をおりた。

女が道に倒れていた。女は失神しているようだった。

 

「あっ。三崎さんの奥さんじゃありませんか。」

 

車の前の明りで顔が見えた。志村はおどろいて、桃代をゆさぶった。

「ああっ。」と目をひらいて、桃代は志村を見つめた。

「志村さんね。志村さん・・・。」

「あぶなかった。ぶっつけませんでしたか。」

志村は桃代を車にかかえ入れながら、

「奥さん、どうしてこんなところに・・・?」

「志村さんの車を待っていたの。」

「なんですって?」

「この河岸を通ってお帰りになるの、わかっていますから。」

「医者へ行きましょう。」と志村は言った。

「医者はいやよ。医者はいや。あたし、どこもなんともないのよ。」

「それじゃ、お宅へお送りします。」

「いや、いや、うちはいやよ。志村さんの車を待ってたんじゃないの。」

「落ちついてください。」

「落ちつかせて・・・。どこかで少し休ませて・・・。」

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志村は河岸から町にはいると、小さい旅館を見つけて、車をとめた。

「ああっ、志村さんをつかまえたわ。」

「僕を誘惑するのに、あんな危険をおかしたんですね?」

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待ち伏せて車の前に飛び出すなんて

センセーショナルです、劇的です。

愛する男を盲目的に追いかけて来る女の映像が目に浮かびます。

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霧のたちこめる夜の道で、ヘッドライトの光の陰で見えにくくなっているであろうナンバープレートを瞬時に読みとり、「志村の車だ」と判断して飛び出すのは現実的に不可能・・・というツッコミは厳禁です。

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「あたし、心もからだも、よごれているのよ。」

「このなかになにがいるのか、僕は見たいね。見せてほしいね。」

志村は桃代をむきだして、「こんなきれいなからだが、どうして、よごれていると思うんだろう。」

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桃代をむきだして、とは「桃代を裸にして」という意味です。

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「見ないでちょうだい。あたしのなかにいる、なにが出て来るかわからないから・・・。」

「いいよ、なにが出ても・・・。なかにいるやつを、みんな追い出そうよ。鬼でも魔でも、みみずでも、とかげでもね。」

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思いっきり乱れても大丈夫だよ、という意味かニャ・・・。

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志村はやさしく静かに言った。

「どうしてこんなものつけてるの。」

「女だから・・・。」

「ふしぎだねえ。」

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おっぱいのことです。

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川端康成は、とてもきれいな文章を書くので、さらっと読むだけならなんともありません。

が、

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よく読むと、とんでもない内容が隠されている小説家ですね。

参考文献
川端康成 初恋小説集 新潮文庫 

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www1.odn.ne.jp

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追加

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おっぱいってふしぎです・・・。

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